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人生100年時代の活力をつくる医学マガジン

私たちが行うべきは、カロリー制限?断食?  —若く健康でいるための安全で効果的な方法とは−

カロリー制限(CR)の有用性

「老化プロセスは可逆性であり、食物および遺伝的な介入によって、老化を加速または減速できることは明らかになっている」。田之倉優氏(東京大学大学院農学生命科学研究科特任教授)は、その最も有効なアプローチ方法の一つは「カロリー制限(CR)」であると述べます。
 CRとは、栄養失調にならない程度に食物摂取量を減らす方法で、これによりモデル生物(酵母、線虫、ショウジョウバエ、マウスおよびラット)の老化の遅延と寿命の延伸をもたらすことが明らかになっています。また、ヒトに近いアカゲザルを用いた研究においても、長期間のCR がアカゲザルの生存率を伸ばし、がんの発生率を低下させると報告されています。
 CRにおいては、この寿命延長効果、がんの進展抑制効果の他にも、神経変性疾患、自己免疫疾患、心血管疾患、糖尿病などの加齢関連疾患のリスクを低下させるなど、健康にとって有益な面も多く、CRが健康寿命を延伸するために効果的な介入法の一つであるのは間違いないといえるでしょう。

断食の有用性

 20歳からヨーガと玄米食の生活を続け、1年に2回、7日間の断食を実践しながら絶食(断食)研究を行っているのは、関塚永一氏(国立病院機構埼玉病院名誉院長)です。
 絶食療法(ファスティング)の期間は、基本方法として約1週間前後が多いですが、週1日や月に1~2日の超短期間のものから、何十日連続といった長期間断食もあり、その人の精神的な忍耐力と目的によって異なります。
 今まで、絶食療法は、さまざまな慢性疾患や難病の克服と治療のために行うことが多かったのですが、現在では、肥満をはじめとするメタボリックシンドローム、アンチエイジング、美容、そして抗がん療法や精神修養など、多くに適用されていて、その効果は大いに有効であることが、改めてエビデンスとともに認知されつつあります。

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CRも絶食(断食)療法も、さまざまな研究により、メカニズムや効果のほどが明らかとなり、ともに健康寿命延伸に導くことが証明されてきています。しかし、これらの療法が、いまだ薬物療法や手術ほど重要視されずにいるのはなぜでしょうか。急速に少子超高齢化に向かう今の日本において、予防医療の面でも、医療費削減の面でも、改めて見直すべき療法といえるでしょう。

※この内容は、2018年5月発売の「アンチエイジング医学 2018年4月号(Vol.14 No.2)」に掲載された「誌上ディベート カロリー制限 VS 断食」を要約したものです。
詳しくは、学会誌をぜひお読みください。
http://www.m-review.co.jp/magazine/detail/J0038_1402
なお、日本抗加齢医学会会員の方には、学会誌(年6回発行)を全てお届けしております。

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