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口腔顎顔面トレーニングの是非

 嚥下の練習のためには口腔顎顔面トレーニングは大きな効果がありそうである。一方,顔 面筋を鍛えることは美容上マイナスになるという。筋肉を麻痺させるボトックス注射を すると、おでこや目の周りのシワが取れて患者様の満足度はとても高い。顔面筋のトレーニングに関して、摂食・嚥下のしわやたるみなどの美容の面から解説していただいた。

口腔顎顔面トレーニングは有効であると「是」の立場から

阪井 丘芳 大阪大学大学院歯学研究科顎口腔機能治療学教室教授

摂食・嚥下は,食物の認識から,食塊を口腔から咽頭、食道を通過して胃に入るまでの連続的な動作のことを示します。随意運動と不随意運動の両方を含んでおり、動作の一部に支障が生じても口腔機能に影響を及ぼし,摂食・嚥下障害が生じることとなります。
最初に食物が入る口腔は食物の情報を獲得して唾液を分泌し、咀嚼筋による下顎運動で食塊形成を行います。食塊の送り込みに重要な働きをする舌も筋肉であり、さらに,口腔に続く咽頭も横紋筋からなり,内層の縦走筋と外層の輪走筋で構成されています。
このように、口腔が筋肉をはじめとする組織で構成されており,摂食・嚥下は多くの筋肉の共同作業により成立しており、筋力低下は摂食・嚥下機能に直接影響を与えることが明らかです。さらに、身体に有効な生理活性物質を多く含む唾液の分泌にも関与することを冷静に考えると,口腔顎顔面のトレーニングは筋肉の維持,唾液分泌の亢進,健康維持に有効であると言わざるを得ません。

表情筋トレーニングは しわ,たるみを悪化させる「非」の立場から

宇津木龍一 クリニック宇津木流院長

 口腔顎顔面の筋力トレーニングというと,表情筋の筋力低下や協調運動不全などに対し,動きや筋力を鍛えることで,よりよい豊かな表情を作るとともに,血行やリンパ流の促進効果も期待して行う美容法を指します。
一方、医療分野では,機能が低下した顔面神経や表情筋に対するリハビリテーションを目的とした理学療法として行われており効果の実証が試みられていますが、期待した客観的効果を得ることが難しく,医療としては採用しにくい状況にあります。
主要なしわは,表情筋に力を入れて筋が強く収縮した部分にでき、収縮したまま拘縮してしまうと常にしわができたままの状態になりますが,ボツリヌストキシン製剤を注射して筋を弛緩させれば,しわは消えて,皮膚の毛穴やキメなどのtextureも同時に改善します。
表情筋を鍛えて引き締めるとしわ,たるみは悪化することから,しわ,たるみ対策として表情筋トレーニングは悪化を招くため推奨できず,むしろ禁忌と考えます。

※この内容は、「アンチエイジング医学 2015年8月号(Vol.11 No.4)」に掲載された「誌上ディベート 肉食の是非」を要約したものです。
詳しくは、学会誌をぜひお読みください
なお、日本抗加齢医学会会員の方には、学会誌(年6回発行)を全てお届けしております。

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