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人生100年時代の活力をつくる医学マガジン

公益財団法人 骨粗鬆症財団理事長 折茂 肇 先生

折茂 肇 先生

2019年抗加齢医学功労賞受賞

 この度、抗加齢医学会から功労賞を受賞する光栄に浴し大変感激しております。

 この機会に今までの私の研究生活を共に取り組んでこられた諸先輩並びに同門の方々、私を支えてくれた家族に感謝しつつ、この50年を振り返ってみたいと思います。
 
 私は昭和34年(1959年)に東大医学部を卒業し当時の冲中内科に研究生として入局しましたが昭和39年(1964年)に日本で最初の老年病学教室が誕生し助手として就任、老年
医学の領域に足を踏み込みました。
 
 昭和46年(1971年)に東京都に大規模な老人医療センター(現健康長寿医療センター)が設立され、先輩の村上元孝先生が病院長として就任され私は内分泌科医長として就任
しました。

 昭和53年(1978年)第11回国際老年学会が日本で開催されました。私は事務局長として村上元孝会長を補佐し、裏方を担当し、これがきっかけとなって諸外国に多くの”Gerontology friends”を作ることが出来、国際舞台での活躍の足掛かりとなりました。

 昭和56年(1981年)古巣の東大医学部老年病学教室の助教授に就任し、昭和61年(1986年)に教授となりました。 「自分を超える人材を育てる」ことが必須であるとの信念のもと日本における老年医学の基礎をかためるためのシステム作りに力を注ぎました。

 平成7年(1995年)に日本老年医学会初代理事長に就任し日本老年医学会の組織作りを行いました。

 平成13年(2001年)から現在まで19年間、公益財団法人骨粗鬆症財団理事長、平成18年(2006年)から国際骨粗鬆症財団理事(アジア太平洋州代表)として骨粗鬆症の予防、治療についての研究助成、啓発活動に従事しております。

 私はカルシウム代謝の研究がきっかけで老年医学の研究の世界に入り骨粗鬆症や動脈硬化についての研究を重ねて来ました。

 最近は老化について大変興味を持ちひとつのライフワークと言うべき考えを持つようになりました。

 かの著明なWilliam Ostler先生は「ヒトは血管と共に老いる:A man is as old as his arteries」という言葉を残していますが、私は「ヒトは骨と共に老いる:A man is as old as his bones」と考えています。

 最後に私と抗加齢医学会とのかかわりについて触れたいと思います。私は現在、日本抗加齢医学会顧問をつとめており、日本抗加齢協会の二代目理事長をつとめさせていただきました。そのきっかけを作られたのは故水島裕参議院議員でありました。

 私は抗加齢医学会が発展するために必要なことはまず老化予防のためのエビデンスを集積することであると考えていたので協会の理事長を引き受けることにしたのです。

 抗加齢医学会が目指す目標は何でしょうか?
 私は“Healthy aging”を達成するための方策を研究することではないかと思います。

 100才人生と簡単に云いますが、これは人類史で本当に大転換を迎えることを意味します。これまでの人類史での人生の価値観や制度は「人生50年」を前提に築かれてきたもので100才人生を生き抜くには、これまで信じてきた人生観や死生観の転換が求められます。
 「人生100年」時代にふさわしい生き方や人間性について、今までの考え方を改めて再構築し新しい生き方、哲学を打ち立てることが必要ではないかと思います。

 最後にこれから研究を目指す若い方々へのエールを送ります。

 私のモットーは「チャレンジ精神をもって生涯現役を目指すこと」であります。私は研究を始めた時から何かオリジナルな仕事をしたいと強く意識をしておりました。人は新しいことを認めたがらないので、大変だが苦労して何とか自分の道を切り開いて行こうとする心情さや、頑固さ、根性が大事ではないかと思います。更に重要なことは異文化に接することであります。同じ穴のムジナと接してばかりいると目からうろこがはがれるような発想は生まれてきません。研究戦略として学際研究を行うことも必要だと思います。

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