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人生100年時代の活力をつくる医学マガジン

BTRアーツ銀座クリニック院長、神戸大学名誉教授 市橋 正光先生

BTRアーツ銀座クリニック院長、神戸大学名誉教授 市橋 正光先生

2020年度抗加齢医学功労賞受賞

日本抗加齢医学会と関わったきっかけ

 私が抗加齢医学研究会(当時)に参加したきっかけは、長年にわたり太陽紫外線が皮膚に与える影響研究をしていたのですが、皮膚の抗加齢の視点からお誘いを受けたと記憶しています。私は顔のシミの専門家と思われていたようですが、実際には、紫外線による皮膚がんや皮膚がん前駆症、光線過敏症の専門家でした。また、活性酸素に関する研究会にも参加していたのでそちらからもお誘いがあったと記憶しています。

日本抗加齢医学会は20年で何が変わったのでしょう

 まず医学そのものが変わりました。昨年1週間入院したのですが、担当医は、MRIやデータ、画像を見て診断し、聴診器など当てません。患者の顔も見ません。データにならないものは診ないし、患者の顔色を窺うこともなく、データと画像で診断します。つまり将来的にはAIが全て診療できる時代がやってきます。医者の特徴や能力は何なのか、何をすべきなのだろうかと思いました。

 日本抗加齢医学会に所属する皆さんは何を目標にして、どんな医師になるべきか、どのように患者を診るべきなのか。難しいですが考えていかねばならないと思います。

 日本抗加齢医学会が小規模な時は登壇する人が知り合いばかりで、質問もしやすく人同士が容易に知り合えましたが、20年経つうちに組織が大きくなり、質問しづらくなったと感じます。質問した方が面白いです。質問するということは講演者に敬意を払うことであると思いますし、講演者が一番の専門家なのだから、何でも意欲的に質問して自分の知識を身に付けてほしいです。

20年経っても変わらないこと、日本抗加齢医学会は面白い!

 この学会の最大の特徴は自分の専門でない分野のトップレベルの先生の講演を聴けることです。皮膚科学には関係ないけれど脳卒中の患者さんも診療できるし、視野が広がってそういったことに抵抗がなく診療の幅が広がりました。抗加齢医学は対象分野も広く、最新情報についていくのは大変ですが、臨床だけでなく基礎研究を含めて学ぶことができます。自分は皮膚科が専門ですが糖尿病や高血圧など、その分野のトップの先生からサイエンスを学ぶことができました。こんな学会は他にありません。

第21回日本抗加齢医学会総会  抗加齢医学功労賞受賞式にて

自分がおもしろいと思うことを見つけ挑戦し、人生の目標をもとう

 日本抗加齢医学会には多くの臨床の先生に所属頂いていると思いますが、日々の診療の一つひとつが事実であり、サイエンスの糸口です。Ph.D.では経験できないことをしているのです。先日もこのクリニックで幹細胞治療を受けた患者さんからドライアイが改善したと聞きました。診療には教科書に載っていない事実や発見があります。そこから問題提起することこそ僕たちがすべきことなのだと思います。

 新たなことに挑戦することはとてもエキサイティングです。幹細胞治療をクリニックで始めましたが、未知なことばかり。論文に見当たらない事実に遭遇するので、また新たな仮説を立て研究を進めたいと思っています。第22回日本抗加齢医学会総会でも治療について発表予定です。

若い人へのメッセージ

 若い先生には「これをやっていたら楽しい」、「これが生き甲斐だ」ということを見つけて、新たに挑戦していってほしいです。他の治療では手の施しようがない患者さんが諦めて来られた時に再生医療で少しでも治癒できた時はやはり嬉しく、その喜びから「あの先生と共同研究したら難病も治療できるかもしれない」などと考えたりしています。 臨床で何か面白いことを見つけたら研究して、答えを見つけていってほしいです。日本抗加齢医学会にはいろいろな先生がいらっしゃるので、是非声をかけて、共同研究を始めてみて下さい。

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