第18 回日本抗加齢医学会総会 理事長提言① ユニエイジ時代に求められるアンチエイジング医療!
- 抗加齢医学を知る
- 2019年4月1日
現代社会では、80歳を超えても世界最高峰エベレスト登頂も可能になる一方で、小学校から起業家を育てようといった新しい教育の形も進んできています。これまで年齢で分けられていた社会構造の分類が曖昧になってきているのです。まさに「ユニエイジ」の時代が来るのではないのでしょうか。こういった時代になると、どんな年齢であっても、健康で社会に貢献できるか、または何らかの理由でそれができないかといった分け方も考えられると思います。
抗加齢医学とは、加齢に伴って生じる「負」の現象が起こらないように行動する学問領域であり、抗加齢医学の「抗(アンチ)」はマイナスに対して起こす行動という意味を含みます。
最近では、「サクセスフル・エイジング」や「ウェル・エイジング」の使用を勧める意見もあり、高齢という概念が社会に適応するという意味ではよい言葉だと考えます。しかし、加齢が遺伝子にマイナスの影響を絶えず与えていることを考えると、我々医療従事者は「アンチエイジング(抗加齢)」という言葉を使うことが正しいのではないかと思います。
加齢による老化の表現型には、認知力の低下や筋力の衰え、骨粗鬆(しょう)症、内臓脂肪の増加、心血管機能の低下、不眠などが挙げられます。一方、医学的な変化の項目としては酸化ストレスや免疫応答、持続性の炎症、概日周期の乱れ、自律神経系の不調などがあります。これらの根本的な原因は、遺伝子が活性酸素によって障害を受けたり、不安定になったりすることにあります。つまり、活性酸素は細胞の老化に非常に重要な役割を持ちます。
活性酸素の消去能は、加齢とともに低下します。多くの病態が酸化ストレスの発生を増加させることが分かってきており、この活性酸素の発生をいかに減らすかが、抗加齢医学の1つの大きな目的になります。活性酸素は、食事から摂取したカロリーをミトコンドリアでエネルギーに変換する際に発生するため、そもそも摂取カロリーを制限することもその対策の1つとなるのです。実際に、カロリーを制限すると長寿になることがさまざまな動物を使った試験で明らかになっています。
このカロリー制限は、長寿遺伝子と言われる「サーチュイン」のスイッチをオンにすることが分かっています。綱のようにらせん状に巻かれた状態の遺伝子は、転写される時点で一旦ほどかれます。この時に活性酸素によって傷がつきやすくなるのですが、サーチュインは、このほどかれた遺伝子を再度しっかりと締め直してくれる働きを持っています。端的に言うと遺伝子に傷をつけないように防御してくれる役割を持つのです。
よって、サーチュインの発生をいかに増やしていくかということが、アンチエイジングにとって非常に大事になり、具体的な方法として、有酸素運動やレジスタンス運動、性ホルモンであるテストステロンを増やすこと、COQ10やポリフェノールの摂取、PDE5阻害薬などの薬剤投与などが確立されてきています。
※この内容は、第18回日本抗加齢医学会総会(2018年5月25日)で発表されたものです。