Action!

人生100年時代の活力をつくる医学マガジン

DHA?EPA? −知ってるようで知らない、それぞれの違いは?−

ドコサヘキサエン酸(DHA)とエイコサペンタエン酸(EPA)、ともにω-3(n-3)系多価不飽和脂肪酸で,青魚の魚油に含まれる健康成分。化学構造も似ていて、同じように抗炎症作用や脂質低下作用を示します。知っているようで知らない、それぞれの作用とは?

DHA、EPAが有する多くの生理作用

DHA、EPA ともに、膜機能の維持や脂質メディエータとしての多くの生理作用を有しています。臨床的には、脳・眼機能の発達、認知症予防、脳卒中予防、抗うつ、虚血性心疾患予防、脂質改善、降圧、糖尿病改善、抗アレルギー、抗炎症、抗がん、骨粗鬆(しょう)症予防、サルコペニア予防、慢性関節リウマチ改善など、さまざまな作用を有していることが知られています。
 ちなみに、日本人の一般的な食事では、EPA はほぼ100%が魚類由来であり,DHA は約90%が魚類由来、残りの10%は鶏卵由来である。通常、DHA,EPA は魚油から同時に摂取されています。

●DHA

脳機能維持・神経保護作用

アルツハイマー病患者において、DHA の血中濃度の低下が観察されることが、フラミンガム・スタディはじめ、多くの研究で明らかにされています。習慣的なDHA の摂取が少ないことが脳の老化促進やアルツハイマー病発症と関係する可能性もあり、若い頃からの食生活の改善が重要です。

抗炎症作用

DHA、EPAともに、抗炎症作用がありますが、その作用は、DHAの方がEPAよりも強いともいわれています。糖尿病、肥満、がん、心血管性疾患、筋骨格系疾患などの慢性疾患は炎症性の変化を伴っており、アレルギー性疾患や慢性関節リウマチなどの免疫疾患もその病状の大部分は炎症性の変化によるものであるため、DHA の持つ抗炎症作用は、こうした疾患の症状を抑え、進展を予防するものと期待されるところです。

●EPA

心血管疾患の予防の観点において重要な役割を持つEPA

EPA は、冠動脈疾患、大動脈瘤(りゅう)、脳梗塞などの動脈硬化性疾患のみならず,心不全やさらには心房細動や静脈血栓症とも関連することがさまざまなデータから明らかになっています。EPAの適切な摂取や日々の食習慣は、心血管疾患の予防や治療の観点から極めて大切です。

心血管疾患とEPA/AA 比との関連

多価不飽和脂肪酸は、その量のみならず、そのバランスが心血管疾患の発症や進行に関連しています。なかでも、ω3系多価不飽和脂肪酸とω6系多価不飽和脂肪酸の代表であるEPA とAA のバランス比、すなわちEPA/AA 比が注目されています。EPA/AA 比は、冠動脈疾患、大動脈疾患、静脈血栓症、脳梗塞などの心血管疾患の発症リスクと関連する臨床的に重要なマーカーといえるでしょう。

***********

 DHA,EPA にはさまざまな疾病予防,健康維持の作用があり,十分な量を摂取することが重要です。DHA、EPA はできるだけ食事から摂ることが理想的ですが,特に油脂類の摂取が不足しがちな高齢者などでは、サプリメントを上手に使いながら補っていくことも必要でしょう。

※この内容は、2018年5月発売の「アンチエイジング医学 2018年10月号(Vol.14 No.5)」に掲載された「誌上ディベート DHA?EPA?」を要約したものです。
詳しくは、学会誌をぜひお読みください。
http://www.m-review.co.jp/magazine/detail/J0038_1405
なお、日本抗加齢医学会会員の方には、学会誌(年6回発行)を全てお届けしております。

POPULAR TAG

タグ

TOP