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食事中のAGEsは有害?無害? —生体AGEs は食品中のAGEs に由来するのだろうか−

 生体におけるAGEs(糖化最終生成物:advanced glycation end products)の生成と蓄積は極めて複雑であり,常に一定レベルで生理的に生成し,老化に伴い組織での蓄積量は増加するとされています。臨床においては糖尿病のコントロール指標であるHbA1c がAGEs の一つとして有名ですが、AGEs の由来となるタンパク質はさまざまなものが生体にはあり,さらに中間反応生成物も含め,多彩な活性中間体の存在が知られています。
 最近のAGEsに関する研究において、「食品中AGEsは悪である」という報告が増えていますが、今回のディベートのポイントは、「生体AGEs が食品中のAGEs に由来するかどうか」という点であり、抗加齢医学の面において大変興味深い内容です。

●「有害」の立場から
山岸 昌一(久留米大学医学部 糖尿病性血管合併症病態・治療学教授)
「数々の臨床研究結果からみても、外因性AGEs の各種病態に及ぼす作用は大きい」

 AGEsは、体内で作られるだけでなく外からも体内に取り込まれ,食事に由来する外因性AGEs は,生体内に存在するAGEs の約1/3を占めるといわれています。
 近年,非侵襲的に皮膚の自家蛍光(SAF)値を定量することにより,AGEs の生体内蓄積量を推定する方法が開発され、このSAF値によって様々な臨床研究が行われています。それにより、AGEsは糖尿病の合併症やさまざまな老年疾患の発症・進展に関わることが明らかになりました。また、自身の研究において、AGEs 量の蓄積が,年齢とは独立して,生活習慣の歪み(喫煙,運動不足,精神的ストレス,睡眠不足,朝食抜き,甘いものを多く摂るなど)によって亢進することも明らかにしています。
 喫煙の有無や食習慣の違いによって生じる外因性AGEs の摂取量の多寡が,老年兆候や寿命に影響を及ぼしている可能性もあることから、AGEsは抗加齢医療を目指すための新しい治療標的となりうるのではないかと考えます。

●「無害」の立場から
永井 竜児(東海大学農学部バイオサイエンス学科 食品生体調節学研究室教授)
「食事中のAGEsは有害だというにはエビデンスが不足しており、今の段階ではそう言い切れない」

 食品分野でAGEs はメラノイジンとも呼ばれ,日本の味噌や醤油をはじめ、世界各国でさまざまな加工食品の芳香,栄養価に関与する反応として研究がなされており、そこには長い歴史があります。
 歴史的にみれば、AGEs は生体に「善」と結論する報告が多いものの、過去20年ほどは、食品中AGEs を「悪」と考える報告が増え、それが話題となっています。これには、「生体に毒性を示すといわれるAGEsの具体的な構造が不明」であるために、食品および生体に吸収される濃度も不明瞭となり、過剰に不安が煽られていると感じます。AGEsの毒性を判断するには、疫学的な調査も含め、構造を特定し、その食品中および生体吸収濃度も精査される必要があるのではないでしょうか。

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 血中などで計測されるAGEs は、さまざまな臓器不全,合併症のリスク因子となるようであり,抗加齢医学研究における重要なバイオマーカーの一つとして認識されつつありますが、生体AGEs が食品中のAGEs に由来するかどうかを結論付けるには、まだ食品(食材)摂取後の生体内動態についての研究が必要であり、今後エビデンスが待たれるところです。

※この内容は、2019年3月発売の「アンチエイジング医学 2019年2月号(Vol.15 No.1)」に掲載された「誌上ディベート 食事中のAGEsは有害?無害?」を要約したものです。
詳しくは、学会誌をぜひお読みください。
http://www.m-review.co.jp/magazine/detail/J0038_1501
なお、日本抗加齢医学会会員の方には、学会誌(年6回発行)を全てお届けしております。

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