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カロリー制限vsたんぱく質制限 ―アンチエイジングのために実施すべきは―

 高齢者におけるたんぱく 質不足,骨粗鬆症、フレイルの問題から考えると,たんぱく質制限はどの程度健康寿命の延伸に有効なのでしょうか?

 現在のアンチエイジング医学の大きな研究の柱にカロリー制限(caloric restriction:CR)があり、ほとんどすべての動物において, CR によって健康が増進し,寿命が延長することが確認されています。最近,たんぱく質制限論文が脚光を浴びていますが,高齢者におけるたんぱく質不足,骨粗鬆症、フレイルの問題から考えると,もともとたんぱく質摂取量の多くない日本の高齢者に,たんぱく質制限はどの程度有効なのでしょうか?一時的な断食のように副作用のない CR の良い所取りの方法の開発が待たれるところです。

カロリー制限はアンチエイジングのゴールデンスタンダード

 カロリー制限(CR)の寿命延長効果はたんぱく質制限より強力とするのは、新村健 兵庫医科大学内科学総合診療科主任教授。

 げっ歯類に限っての研究報告では、40%カロリー制限で平均寿命への効果は約30%の延長と推測されています。たんぱく質15%未満までの制限で初めて寿命延長効果が再現性をもって確認されていますが、これはカロリー制限効果の半分に過ぎません。

 また、高齢者を対象とした研究では、たんぱく質摂取が多いほど、3年後の筋肉量低下率が低いと報告されており、日本人の食事摂取基準2015年度版でも高齢者のたんぱく推定平均必要量は0.85g/kg/日と成人よりも高く設定されています。高齢者にとって、たんぱく質制限は絶対禁忌といえます。

たんぱく質制限は健康寿命の延伸につながる

 サーチュインの研究で知られている古家大祐金沢医科大学糖尿病・内分泌内科学教授は、たんぱく質制限(PR)は健康寿命の延伸につながるとしています。

 6,381人を18年間追跡した研究にて、50~60歳代では高たんぱく質摂取(エネルギー比>20%)の人々は低たんぱく質摂取者(エネルギー比<10%)に比べ、死亡率(75%)、癌死(4倍上昇)、糖尿病関連死が増加していることが報告されており、タンパク質摂取量と健康障害の可能性が示されました。

 また、マウスにおいて低たんぱく質・高炭水化物比エネルギー比食によって、血圧低下、耐糖能の改善、HDLコレステロール上昇、LDLコレステロール低下と中性脂肪低下がみられ、心代謝改善につながる結果が得られました。さらに代謝異常マウス(高血糖、肥満、脂質異常)が低たんぱく質食によって顕著に改善されました。

 PRも、対象や量に注意が必要であるもののメタボリックヘルスが達成可能であることがわかっています。CR研究にも様々な課題が残っており、PR研究と並行し基礎的臨床的に幅広く研究されていくことが期待されます。

※この内容は、2017年5月発売の「アンチエイジング医学 2017年4月号(Vol.13 No.2)」に掲載された「誌上ディベート カロリー制限 VS たんぱく質制限」を要約したものです。
詳しくは、学会誌をぜひお読みください。
https://publish.m-review.co.jp/magazine/detail/J0038_1302
なお、日本抗加齢医学会会員の方には、学会誌(年6回発行)を全てお届けしております。

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