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肉食の是非

 肉食は控えたほうがさまざまな疾患の予防にもなり,平均寿命も長くなる。しかしながら,肉食によって素晴らしいたんぱく質の供給が行われ,特に加齢によるタンパク質不足には肉食は大きな健康プラスになる。百寿者に聞いても、肉食を避けている人はほとんどいないことを考える と,肉食自体が悪いわけではないだろう。やはりここもバランスか?
 たんぱく質の供給源等としての肉食のメリットと生活習慣病発症リスク等のデメリットを解説していただいた。

「是」の立場から

高田 明和  浜松医科大学名誉教授,NPO 法人 食と健康プロジェクト理事長

 肥満については長い間カロリー量より多い場合に肥満になるというエネルギー説が信じられてきましたが、近年は、炭水化物を摂取した後にインスリンが放出され、これが脂肪細胞に作用してブドウ糖を取り込ませ、それを脂肪に変換するのが肥満の原因だとするホルモン説が台頭してきています。

 摂取カロリー量を同じにした場合、体重の変化は高たんぱく食で最も減少したという試験結果があります。同じカロリーとして摂取されたたんぱく質のエネルギーは基礎代謝の上昇として使われるということです。

 コレステロールが高いと動脈硬化を引き起こし、心筋梗塞や脳梗塞を引き起こすという説にも根拠はありません。さらに、肉に含まれるアラキドン酸がトロンボキサンA2になり血栓を引き起こすことが心配されていましたが、アラキドン酸摂取は血栓を誘発しないことが日米の研究で示されています。また,糖尿病患者に高たんぱく食を摂取させるとHbA1c が劇的に低下して、HbA1c が約10から5週間後には7以下になったという研究結果もあります。

「非」の立場から

細島 康宏 新潟大学大学院医歯学総合研究科病態栄養学講座特任准教授

 日本の「食の欧米化」は、肉類の摂取増加に伴う脂質や動物性たんぱく質の摂取増加と言い換えることができます。糖尿病や痛風,メタボリックシンドロームといったいわゆる生活習慣病や一部のがんの患者の急激な増加は、過剰な肉類の摂取が危険因子ではないかとの報告が散見されます。

 欧米では、過剰な肉類や魚介類の摂取は痛風の危険因子となるといった報告や,肉類(赤肉)の過剰な摂取と糖尿病発症の関連を示唆する報告が相次いでなされています。日本糖尿病学会と日本がん学会の合同委員会からは,赤身・加工肉の過剰摂取などを含む不適切な食事は,糖尿病・がんの罹患における共通の危険因子として注意を促す委員会報告がなされています。

 日本人が最も多く摂取している植物性たんぱく質は「米」由来のもので10%程度含んでいます。近年は、米胚乳部分のたんぱく質を簡便で大量に精製することが可能となっています。生活習慣病の予防や進展抑制のためには、植物性たんぱく質の割合はどの程度が適当かなどの解明が必要と考えます。

※この内容は、「アンチエイジング医学 2014年6月号(Vol.10 No.3)」に掲載された「誌上ディベート 肉食の是非」を要約したものです。詳しくは、学会誌をぜひお読みください。

 なお、日本抗加齢医学会会員の方には、学会誌(年6回発行)を全てお届けしております。

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