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人生100年時代の活力をつくる医学マガジン

ルイ・パストゥール医学研究センター分子免疫研究所所長、京都府立医科大学名誉教授 藤田晢也 先生

藤田晢也 先生

2018年抗加齢医学功労賞受賞

 抗加齢医学研究団体を立ち上げようとの構想から20年。この度抗加齢医学功労賞をいただき、ありがとうございます。心から会員の皆さまには御礼を申し上げます。

サイエンスに基づいたアンチエイジングの発信

 初代理事長 渡辺慶一先生は、新しい情報について敏感で、国際的な感覚も持ち合わせており、これからは、「年を取っても老いぼれてしまわない。女性もいつまでも若々しく美しくいることは人々の大きな生きがいとなってくる。同時に国から見てもたくさんの人が元気で病気にならず、ぴんぴんしていくことは大きな意味があるんだ」と言っていました。

 この頃アメリカでは既にアンチエイジングという概念が言われていました。そんな矢先2000年のアメリカのアンチエイジング学会(A4M)ラスベガス大会で、日本のアンチエイジングの現状について講演をとの依頼がありました。私が日本を代表して、癌の免疫治療法の話をしました。当時はまだそんなことがあるのかという時代でしたが、免疫療法で、不自然でなく癌を抑えて、長生きできるということを具体的に話しました。その時参加していたアメリカの人たちが非常にエキサイトして、次のセッションに行けないぐらい人が並んで、非常に手ごたえが良かったのです。

 帰国後、アメリカでやっているアンチエイジングの学会と日本でこれから始めるアンチエイジングの学会の整合性をどうするかという話を議論しました。
アメリカで見てきたA4Mという学会は、さすがアメリカ的でコマーシャリズム的なところは派手でしたが、医学的には熱心ではない人たちが主流だと感じました。日本ではサイエンスに基づいた、高齢者の生き方をこれからは開発すべきだという確信しました。

サイエンスに基づいたアンチエイジングの発信がそこだったわけです。

発足当時を振り返って

 従来の老年病学、老年科学では縦割りの各専門科領域に限られた研究が主体になっている中で、加齢現象は幅広い年齢層の人々の様々な部位で起こってくるものです。これから総合的な医師、パラメディカルさらには基礎研究者も加えて、総合的なアンチエイジング研究を行う団体として活動の幅を広げていきたい、力をいれてやれば、国の経済効果も大きい、各個人の幸せにつながる学会であることを強く意識することができたので、これは急いで立ち上げなければいけないということになり、2001年研究会を発足しました。

 当時は、年を取るのは自然なことで、アンチエイジングが本当の意味で個人、社会に意味があるのかという慎重な意見が多数派でした。
基礎的な学会からは、いったい何をやるんだというネガティブであり疑いの声が聞こえてきましたが、あまり気にせずに、明るく活発にやってきました。

 2002年、第2回日本抗加齢医学研究会での講演をいただいた先生方からの投稿を中心として、アンチエイジングの周知のために、日本語英語両方のウェブジャーナル(Journal of Anti-Aging Medicine)を創刊(2012年廃刊)したのも大きな意味があったことと思います。しばらくは、学会を会場に支払うお金も心配しながら、米井編集長が奮闘し、現在の“Anti-Aging Medicine”の形になり、坪田一男先生が編集を引き受けるようになって内容、発行ともに安定した状況になりました。これには学会事務局の皆さんの絶大な寄与も忘れられません。

今後学会に期待すること

 サイエンスに基づいたアンチエイジングが今でも受け継がれていることは、8500名を超える会員を有するほど学会の発展が証明していることです。

 実践できる科学的根拠も出てきたことがあり、歳を取っても自然ととらえず、抵抗してできるだけ若々しく、生き生きと生きていくという価値観が共感を得て、みんながなんとなく実践している。20年をかけてゆっくりと自然にアンチエイジングに向かっていること、学会がねらっていたのはそういう線です。これが成功しているということは皆さんが実感しているでしょう。

 老人学を研究していた人たちが考えていなかった方向にもジャンルを拡げ、学会の皆さんが年を取ってもいきいきと、楽しく幸せに暮らしていける可能性を、発信してきたおかげだと思っています。素晴らしいことです。

 この学会は入会すると、明るい、楽しい、学問がしっかりしているということは、会員の皆さん方ならよくわかっていると思います。

 私自身は、若返るということは、見かけのアンチエイジングだけではなく、精神的、肉体的に若々しく生きるという状態であり、それをできるだけ続けてやって、最後は寿命が尽きるというのは実に素晴らしいことではないでしょうか。人間は精神が半分以上だと思います。特に歳を取って体力が落ちてくると、精神がどれだけ前向き上向きに維持できるか、行動的であるかでずいぶん違ってくるものと思い、自らも実践しています。

 最後に、これまでの抗加齢医学会が唱えてきた経済効果は本当にすごいことだと思います。一度アンチエイジングの経済的効果を客観的に評価してみることも必要ではないかと思います。国の経済全体に抗加齢医学会が非常に大きく寄与してきたということが理解されるでしょう。

 この学会は今後も社会に益々大きな影響を与えることでしょう。小さなグループも大きな企業も多く巻き込んで、新しいこともやるという時代になると思います。益々の発展を期待しています。

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