
2023年度 抗加齢医学功労賞 受賞
石井 直明 先生
東海大学名誉教授
このたび抗加齢医学功労賞という名誉ある賞をいただき、身に余る光栄です。
抗加齢医学への研究面からの貢献
日本基礎老化学会創設者の一人である鈴木孯之先生の元、東海大学で老化の研究を始めたのが1975年で、まずは老化の分子メカニズムを解明するに相応しい実験動物探しから始めました。Sydney Brennerが線虫C. elegansの遺伝学を確立した論文を前年に発表していて興味を持ったのですが、当時、扱っている研究者は国内に数名で、その一人である東京都健康長寿医療センターにおられた細野隆次先生に教わりながらも、飼育だけでも試行錯誤の毎日でした。1980年頃、鈴木先生から酸素が老化の原因かもしれないのでそれを実験で証明しようと言われました。そこで酸素に高い感受性を示す短寿命突然変異体を分離し、その原因遺伝子がミトコンドリア電子伝達系複合体IIのSDHCであることを突き止めました(Nature 1998)。抗酸化が老化を制御できる可能性を示したことで、抗加齢医学の発展に貢献したと思います。
2000年頃からヒトの健康にも興味を持ち、2006年に付属東京病院に抗加齢ドックを、同時に産官学連携で抗加齢研究をおこなうライフケアセンターを大学院医学研究科に設立、また2019年の健康学部設立の手伝いをしました。
抗加齢医学会への貢献
抗加齢医学会との出会いは、NHKから抗加齢医学会について放送したいので出演して意見が欲しいとの連絡が最初でした。当時、抗加齢医学会の初代理事長の渡辺慶一先生が東海大学医学部の病理の教授をされていて、同じ建物におられました。取材の話を聞きつけてやって来られ、「悪い印象を与えるような発言はしないで欲しい。サイエンス重視の学会にするので参加して欲しい」と引き込まれ、初代理事にしていただきました。
抗加齢医学会では抗加齢ドックを受診された方のデータを中心に多くの発表をさせていただきました。今後も西崎泰弘教授を初め、抗加齢ドックの若手スタッフたちが学会に貢献していくと思います。
2024年5月31日