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第22回 日本抗加齢医学会総会 教育講演1「細胞老化の過去、現在、未来~ワイスマンから慢性炎症除去まで」講演動画

6月18日(土) 第1会場(5F メインホール(大ホール)) 9:00~9:30
座長:清水 孝彦(国立長寿医療研究センター老化ストレス応答研究 PT

細胞老化の過去、現在、未来~ワイスマンから慢性炎症除去まで

近藤 祥司
京都大学医学部附属病院高齢者医療ユニット

 歴史的に、細胞の寿命に関する知見は、老化研究に大きな影響を与えて来た。1891年、最古の老化研究者ワイスマンは、「細胞は分化状態から解放されれば、老化しない」という仮説を提唱した。カレルらは、細胞培養実験の黎明期に、ワイスマンの仮説を支持する知見を報告した。のちに、ヘイフリックによる複製老化が発見され、カレルらの知見は否定された。ヘイフリックの発見は、テロメアとテロメラーゼの研究に発展し、一方、ストレスによる老化(SIS)はテロメア独立事象として知られるようになった。老化誘導シグナルは、癌抑制遺伝子p53やサイクリン依存性キナーゼ(CDK)阻害p16 Ink4aなどの細胞周期制御因子を含む。これらは、テロメアと同様に、細胞老化のバイオマーカーとしてよく利用されてきた。

 さらに、近年基礎老化研究の進展により、従来の老化の基本概念である「非可逆性」や「有害性」が見直されつつある。老化の再定義の必要性とともに、老化制御の可能性が指摘される所以である。例えば、テロメア長計測技術により、老化度に対する生活習慣改善の重要性が確認された(テロメア・エフェクト)。あるいは、カロリー制限仮説に端を発し、NADの前駆体物質であるニコチナマイドモノヌクレオチドNMNの健康効果が注目を浴びている。さらに細胞老化の両面性の発見により、老化細胞からの炎症性サイトカイン分泌が細胞老化関連分泌形質SASPを介して慢性炎症の原因となることが判明した。その結果、加齢性疾患の新規治療法の可能性として、慢性炎症除去薬(抗IL-1抗体薬)や、老化細胞除去薬(セノリシス、抗Bcl-2阻害薬)が見出された。かつては夢物語であった、老化制御の可能性が現実味を帯びつつある。

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