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第22回 日本抗加齢医学会総会 教育講演3「血管不全と抗加齢医学」講演動画

6月18日(土) 第1会場(5F メインホール(大ホール)) 10:00~10:30
座長:野出 孝一(国立大学法人佐賀大学医学部内科学講座)

血管不全と抗加齢医学

吉田 雅幸
東京医科歯科大学先進倫理医科学分野

血管不全とは、血管という極めて多彩な臓器の包括的な機能障害(血管機能障害)を表す概念であり、心血管疾患の治療や予防にとって重要なターゲットである。これまで主として基礎医学の血管生物学として、血管機能を調節する分子やタンパク質の同定や、血管の恒常性とその破綻というコンテキストで学問が発展してきたが、最近では、FMD,RH-PAT,

baPWV,CAVIなど臨床的に血管機能を測定することができるようになり、心血管疾患の病態と血管機能との関連についても詳細に検討することができる時代となってきた。

“Longevity is a vascular question, man is only as old as his arteries”「ひとは血管とともに老いる」と19世紀の著名な病理学者W.オスラーが看破したように、血管機能と老化現象は密接に関連していることは以前より知られている。動脈硬化症に代表される血管不全状態は加齢が大きなリスク因子であり、従って心血管疾患も加齢によって増加する疾患群である。一方、がんは加齢とともに増加することは知られているが、がん組織の成長には新たな血管新生が不可欠であり、従って血管新生を抑制することががん化学療法の手段として実臨床に取り入れられているという側面もある。

昨年、この血管新生と抗加齢について興味深い研究成果がScience誌に発表されている(Science (2021)373, 533-541)。この論文では、加齢に伴う血管機能低下はVEGFシグナル減弱による血管供給低下だと考え、その原因として可溶性Flt1の増加が関与していると仮説をたて、AAVを利用したVEGF増加が寿命を延ばし、sFlt1の過剰発現が種々の臓器

による老化を促進することを示した。このことは、血管の老化が個体全体の老化のドライバーであることを示し、前述のオスラーの名言を文字通り証明したことになる。

このように血管不全が誘発する老化・加齢を抑制する意味でも血管新生・血管再生は重要な意味をもつものである。

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