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日本抗加齢医学会 2019年度第2回メディアセミナー開催報告

2019年11月25日(月) 14:30-16:30
日本橋ライフサイエンスビルディング 201会議室
主催:一般社団法人 日本抗加齢医学会

講演1 老化研究の最新トピックス

中神啓徳
大阪大学大学院医学系研究科健康発達医学寄付講座 教授
日本抗加齢医学会 理事/広報委員会委員長

 細胞は分裂回数が一定に達すると増殖が止まります。これを細胞老化と言います。近年では、老化した細胞が様々な物質を分泌して周囲の細胞の老化を促進する現象が報告されています。がん遺伝子の活性化や過度な酸化ストレスなど、正常な細胞のDNAにダメージを与えるようなストレスが加わると、老化に似た増殖停止が起きることもわかってきました。
 すでにヒトにおいて、老化した細胞を体内から除去する薬剤の開発が始まっています。2019年にはチロシンキナーゼ阻害薬ダサチニブとポリフェノールの1種ケルセチンの併用による臨床研究の結果が発表されました。老化マーカーの顕著な改善は見られませんでしたが、とにかく基礎研究から最初の臨床研究に進んだことが重要です。
 老化の臨床研究で最も難しいのはエンドポイントの設定で、寿命や死亡率を評価するにはかなりの時間を要します。議論の末、FDAは「主要な老化関連疾患の罹患」としました。①心筋梗塞、脳卒中、心不全②がん③認知症・軽度認知障害④死亡――の発生を複合的に評価するのです。
 このような病気にならない人が長生きするのは当たり前なのですが、老化臨床研究のエンドポイントを決めたという大きな一歩だと思います。このエンドポイントを目指して、米国で経口糖尿病薬メトホルミンの臨床研究が始まろうとしています。対象は歩行速度が低下した60~85歳の高齢者3000人で、観察期間は5年間です。
 老化関連疾患の罹患のさらに前段階である「寿命に関連するバイオマーカーの変化」を検証する動きもあります。その1つが、老化とともに減少するNAMPTという酵素です。これは、長寿遺伝子のサーチュインを活性化するNAD+(ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド)の合成に関わっています。血液中のNAMPT濃度がマウスの寿命を予測すると報告されるなど、老化のバイオマーカーとして注目されています。

講演2 死神AGEsを標的とした抗加齢医療

山岸昌一
昭和大学医学部内科学講座
糖尿病・代謝・内分泌内科学部門教授

 AGEs(終末糖化産物)は老化関連疾患に共通して関わり、老化の根本にある物質です。糖が過剰にこびりついて機能が劣化したタンパク質で、糖尿病患者でなくとも、加齢とともに体内に蓄積します。体内に存在するAGEsの3分の1は外から取り込んだものです。その代表が喫煙や食事で、食品由来のAGEsの7%が体内にとどまります。
 AGEsが蓄積すると、血管が硬くなり、骨はもろくなり、筋肉はやせ細ります。コラーゲンの劣化による皮膚のしわ・たるみ、さらには卵子の老化や男性更年期、認知症、がんなどとの関連もわかっています。
 我々は、日本人1万1000人で皮膚に蓄積したAGEsを検証し、加齢とともに上昇することや歪んだ生活習慣によって実年齢のレベル以上に蓄積することを突き止めました。「見た目年齢」や、体内老化の指標である「利き手の握力」が皮膚AGEs値と相関していることも報告しました。
 2019年にはオランダから、平均年齢50歳未満の健康な7万3000人を対象とした検討で、AGEsの蓄積が糖尿病、心臓病、死亡を予知すると報告されています。65歳以上を対象とした研究室での分析ではなく、健康な一般住民での研究が出てきたのです。
 老化物質であるAGEsを体内に取り込まない、あるいは蓄積したAGEsを除去することで、アンチエイジングになると考えられます。我々は食品中のAGEs値をデータ化しましたので、これを参考に、AGEsの摂取量を1日1万5000単位以内、できれば1万単位以内に抑えてほしいと思います。
食品からのAGEs摂取を抑えるには、油で揚げたり高温で焼いたりした食品を避けることが重要です。一方、体内のAGEsを吸着したり体内でのAGEs生成を抑えたりする食品素材として、きのこなどの食物繊維やブロッコリースプラウト(新芽)に含まれるスルフォラファン、タマネギの皮に含まれるケルセチンなどに期待が持てます。

講演3 令和時代の女性のフレイル:GSMとは?

太田博明
藤田医科大学病院国際医療センター 客員病院教授
山王メディカルセンター・女性医療センター

 加齢に伴い、女性ホルモンのエストロゲンが減少・欠乏すると、腟、外陰部、下部尿路が萎縮し、様々な症状が現れます。腟の乾燥・かゆみ、性交痛、頻尿・尿失禁などで、40代半ばから長期にわたって続き、生活の質(QOL)を低下させます。
 これらは従来、「外陰・腟萎縮症」などと呼ばれていましたが、2014年、下部尿路の問題を含めて包括的に捉えるため、国際的にGSM(Genitourinary Syndrome of Menopause)と呼ぶことになりました。日本語訳は、日本女性医学学会が2019年4月に「閉経関連泌尿生殖器症候群」と定めました。ただし、「泌尿生殖器」と言っても、GSMに腎臓や生殖は関係していないので、「閉経後性器尿路症候群」の方が実態に則していると思います。
いずれにしても、GSMは診察の場では相談しにくい問題です。そこでインターネットで1万人規模のアンケートを実施し、次のようなことがわかりました。

・性器症状と尿路症状は約45%に認められ、70%が気になると回答した。
・症状は尿漏れと頻尿が最も多く、性交痛も多かった。性器症状や尿路症状単独よりも、合併している人が多かった。
・多くの人が、加齢によるものとあきらめており、QOLを損ねていた。

 女性のデリケートゾーンの環境改善には、ホルモン治療、レーザー治療が有効です。レーザー治療は腟粘膜にふっくらと厚みのある上皮をつくり、機能を回復させます。排尿の仕方、尿のふき取り、皮膚・粘膜を守る洗い方など、日常のセルフケアだけでもGSMの多くは改善します。
 高齢による心身の衰弱をフレイルと呼び、人生100年時代の喫緊の課題となっていますが、GSMは「女性のフレイル」と言えます。我々は、女性のよりよいエイジングを目的としてGSM研究会を設立しました。治療法の有効性と安全性を客観的に評価し、GSMの各症状に適切な治療法を提案していきます。

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