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2020年度第3回日本抗加齢医学会 WEBメディアセミナー報告

●日時:2020年12月15日(火)16:00~17:30
●会場:WEB
●内容:
1:新型コロナウイルス感染症の病態と宿主免疫応答
宮澤 正顯(近畿大学医学部免疫学教室教授)
2:新型コロナウイルス感染症流行の現状と見通し
北村 義浩(日本医科大学特任教授 長野保健医療大学特任教授)
3:免疫老化 とミトコンドリア
森下 竜一(大阪大学大学院医学系研究科臨床遺伝子治療学講座教授

1:新型コロナウイルス感染症の病態と宿主免疫応答

宮澤 正顯
(みやざわ まさあき)

*毎年流行する季節性インフルエンザは世界人口の約9%(約6~7億人)が感染して、年間30~50万人が亡くなる。一方で新型コロナウイルスは非常に致死率が高いのが特徴で、世界で7000万人以上が感染し160万人以上が死亡した。さらに、死者数のピークがインフルエンザの何十倍にもなるので患者が集中して医療崩壊が起こる。これがインフルエンザと比べて新型コロナウイルスの怖いところ。
*感染症を起こす病原微生物には、細菌とウイルスの2つがある。細菌にはペニシリンのような「抗生物質」があるが、ウイルスは自分自身で細胞分裂もたんぱく質産生も行わないので細菌に相当する「抗生物質」のようなものを作ることは非常に難しい。
*ウイルスに感染すると、体内にウイルスが入り込んだことを認識して免疫反応が起こりウイルスを体から追い出す。さらに、リンパ球が働く獲得免疫反応では、前回入ってきたウイルスをリンパ球が記憶していて、2度目はより早くより強い免疫反応で体内から排除されるので症状が出ない。
*新型コロナウイルスは細胞に入り込む時に細胞の表面にあるスパイクというタンパク質を利用して入り込むが、抗体が出来ているとウイルスが細胞の表面にくっつくのを邪魔して感染を防げる。一方、ウイルスのコピー工場になってしまった細胞を体外に排出するのはTリンパ球、抗体を作るのはBリンパ球。
*Tリンパ球は細胞内で壊された細胞外に排出されたたんぱく質が正常か異常かを判断して、異常と判断すると活性化して細胞に穴をあけて殺す。そしてTリンパ球がBリンパ球に対してスイッチを押すと、Bリンパ球は抗体を作る細胞に分化する。
*活性化したBリンパ球は、分裂増殖の過程で受容体の構造を変えていきより強く抗原を結合できる高親和性の受容体をもった細胞に変化していく。そして、低親和性の細胞についていた抗原を奪い取って取り込みTリンパ球に提示する。すると、この細胞は分裂増殖して強い抗体を長い時間作り続けることができる細胞になる。ウイルス結合できる中和抗体になれるのは、こういった高親和性の抗体で、抗体を一生作り続けることができるといわれている。
*インフルエンザは感染するとウイルスが急速に増えるため、サイトカインが大量に出て全身を駆け巡り発熱や悪寒がでる。しかし、最初に感染した細胞が処理されると、それ以上ウイルスは増えず治っていく。一方、新型コロナウイルスは血圧を調整するACE2というたんぱく質を使って細胞につくが、このウイルスの遺伝子の2/3はウイルスのコピー工場の設計図。よって、新型コロナウイルスに感染するとまずウイルスのコピー工場ができ、次にウイルスの複製がゆっくり始まり、最後に一気にウイルス粒子を作る。よって感染初期の工場の時点では症状もなく感染がわからない。感染の40%は症状のない人から起きている。
*抗体ができる時にはすでにTリンパ球が活性化していて、抗体を作ることを助けている。中和抗体が効いているわけではなく、Tリンパ球が効いている可能性がある。
*SARSに感染して回復したヒトの体内に最大4年間、SARSウイルスを覚えていたメモリーT細胞が検出できたという報告がある。
*新型コロナウイルス感染者でコロナウイルに反応できるメモリーT細胞を持っていた人は肺の感染の広がりを早く抑える可能性があるが、肺中の血管の壁に感染が広がってしまった場合には、感染した血管の壁の細胞をT細胞が壊しに行くので血管の壁が壊れて血液凝固が起こり重症化につながる可能性がある。
*また、「インターフェロンγ」を作るT細胞が少ないと重症化し、逆にインターフェロンγがたくさん出るT細胞が多く出ている場合は重症化しない可能性がある。さらに、肺線維症に関連するサイトカイン「TNFSF14」が出てくると重症化する。
*つまり、新型コロナウイルスに感染した時、T細胞の反応が感染の広がりを抑えて重症化を抑える方向にも、逆の方向にも働く可能性がある。ウイルスを排除する方向にいかに効率的にT細胞を活性化させるかがCOVID19の攻略の鍵になる。

2: 新型コロナウイルス感染症流行の現状と見通し

北村 義浩
(きたむら よしひろ)

*10月下旬から、全国で第3波が来ている。
*第2波でも第3波でもおおむね罹患率と高齢率は逆相関しており、感染は若年層が拡大させていると言って間違いはない。
*第3波の特徴は全世代に感染者が渡っていることで、若者(40歳未満)が50%、40~50歳代が30%、60歳以上が20%。
*男女差では、20歳代だと女性、中年齢層は逆に男性が多く、高齢者は男女の差異がない。11月以降では男女差はあまりない。
*第2波では、夜の繁華街での感染(21%)が多かったが、11月以降の第3波では41%の家庭、16%の職場とこの2つで60%を占める。しかし、感染者の半分は経路が不明で、家庭や職場でも最初に持ち込んだ人がどこで感染したのかはほぼわかっていない。
*東京都の死亡者の現況は、全国もほぼ同じで80%が70歳以上。60歳以上では、90%以上。つまり60歳以下が新型コロナウイルスで死亡するケースはあまりない。
*診断がついてから亡くなるまでの期間では、第1波と第3波は1~2週間以内、第2波だけは2~3週間が一番多かった。
*実行再生産数は、11月1日以降は首都圏及び大阪、兵庫、京都の大都市では1以下になることがなかった。その2週間前に拡大していた可能性が高く、ハロウィンや飛び石連休で感染が広がった可能性がある。
*今の行動様式では感染者が減ることは絶対になく、よくて現状維持。実行再生産数は0.7まで落とさないとなかなか減らない今は1週間で約3500人/週の感染者数だが、感染対策をしっかりしても10月末の数字にするためには1月の第3週~末までかかる。
*クリスマスやお正月を普通に過ごしてしまうと来年の春までこの状態がキープされ、1週間に6000人、1日1000人の感染者が出る可能性がある。この場合は東京都の医療崩壊が起きてしまう可能性がある。
*インフルエンザは今年の冬は流行しないと思う。例えば、オーストラリアでは冬にあたる7~9月で今年は全く流行しなかった。手洗いやマスク、ソーシャルディスタンスといった対策がインフルエンザには有効な対策だった。また、札幌では毎年夏に飛沫感染で流行する「手足口病」が今年は全く出なかった。一方で接触感染の突発性発疹は全く減っていない。つまり、新型コロナウイルスの感染対策は、インフルエンザや飛沫感染で起こる感染症には抜群に効果があるが、新型コロナウイルス対策としては、さらに飲食での飛沫感染対策を取ることが重要。
*今までのような対策だけでは感染は止まらないで、もっと大胆に生活様式を変えていく 必要がある。

3:免疫老化 とミトコンドリア

森下 竜一
(もりした りゅういち)

*今回の新型コロナウイルスの感染経路として、ダイヤモンドプリンセス号の例では、日本人は同じ環境では欧米人との感染率には大きな差はない。しかし、現在は感染する方が非常に少ない。糞便中に唾液中と同じくらいのウイルスがあることがわかっていて、日本人の清潔なトイレ習慣が影響しているのではないかと考えられる。
*私どもはDNAワクチンの開発をしているが、治療薬の開発も含めて一番難しいことは、「新型コロナウイルスの感染もモデルが作れない」こと。実験動物は感染しないか、しても症状が出ない。
*ワクチンのメカニズムは、感染した人が治るメカニズムを模擬的に作ること。我々が開発しているDNAワクチンはウイルスの一部であるスパイクタンパクをターゲットに、抗体を作って疑似的に感染状態を作り、感染予防・重症化予防をする。
*免疫には自然免疫と獲得免疫の2つがあり、通常は「自然免疫」をさす。外から入ってきた異物にすぐに反応するが弱い反応になる。一方、獲得免疫は特定の異物だけを対象にし、非常に強力。
*免疫機能は20歳くらいをピークに加齢とともに下がる。高齢者が重症化しやすいのは、免疫が低下しているということが1つの原因。これは、免疫細胞自体が老化することにもよるが、特に胸腺が著しく退縮し、ここで作られるT細胞が弱って獲得免疫全体が弱って、免疫の機能障害やワクチンの有効性の低下、慢性炎症などが起こる。
*新型コロナウイルスの感染が一番多いのは、会食中。新型コロナウイルスのスパイクタンパクがつくACE2受容体は口腔内に多く存在しているため、マスクは非常に有効である。
*今回の新型コロナウイルスの感染では、「接触感染」と「飛沫感染」が主な感染経路。特に「エアロゾル」といわれる小さい粒子が舌から侵入するため、口の中の免疫を保つことが重要。
*口の中の免疫物質としてIgAが知られている。IgAはウイルスの表面に結合する機能があり、その結果ウイルスが感染できなくなって唾液等で洗い流されて感染が防げる。
*自然免疫はすべてこのミトコンドリアに依存し、中和抗体を作るB細胞の活性化、さらにT細胞のシグナル伝達系の活性化や増殖にも重要が重要。ミトコンドリアは加齢とともに減るので、まさに免疫老化のメカニズムである。
*CoQ10を摂取したことで、NK細胞の割合が増え、サイトカイン産生能力が上昇することが報告されている。また、高齢者ではIgAやIgGが増えるというデータ報告もある。これによってB細胞、T細胞の両方が活性化されることがわかっているので獲得免疫もCoQ10で改善する。
*また、体内のCoQ10の量が少ないと、インフルエンザウイルスに感染しやすいかもしれないというデータや、インフルエンザにかかっている人は血中CoQ10の量が低下しているというデータもある。B型肝炎ウイルスワクチンを打った人は、CoQ10で抗体産生が増えるというデータも報告されている。還元型CoQ10が増えミトコンドリアのエネルギー産生能力が増えて、結果的に生命活動量が増えて免疫力のアップにつながるのではないか。いずれにしても老化に伴って免疫が低下していく「免疫老化」をいかに防ぐかということが重要。

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