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2023年度第1回日本抗加齢医学会 WEBメディアセミナー (2023年5月11日) ダイジェスト

講演1:声と老化-第2の声変わりに備える―

平野 滋 先生
(京都府立医科大学耳鼻咽喉科・頭頸部外科 教授)

 50歳前後で繊毛機能低下、咽喉頭腺分泌低下に始まり、だんだんと声帯が痩せることによって声が悪くなってきます。この第2の声変わり時に対策をしなければ、嚥下障害という深刻な問題につながります。65歳以上では、最大3割の方が音声障害、4割近くの方が嚥下障害を起こすと言われています。

 声帯の粘膜細胞では、加齢にともない活性酸素の蓄積によって線維芽細胞が減少、劣化するという現象が起こっています。

 声が老化することによって活力が低下したり、職を失ったり、健康への影響が出てくることから、声帯を維持することは大切です。

 声帯維持のためには、アレルギーや胃酸逆流による炎症を防ぐといった声の衛生、喉の保湿、声帯に負担をかけない発声法、抗酸化サプリメントによる声帯粘膜の保護といった予防が重要になります。

 声の衛生ということでは、声がすれの原因の7割を占める逆流性咽喉頭炎を防ぐために、トマトソース、シトラス、ビネガー、カフェインなど胃酸を増やすものの摂取を控えることは大切です。

 喉の保湿は予防の基本で、1日1.5Lの水分摂取が世界標準となっています。ただし、お茶、カフェインは利尿作用があるので偏った摂取はおすすめできません。

 声帯維持のためには負担をかけない発声法も重要です。安定した呼気流と共鳴を誘導するトレーニングとして、ストローをくわえながら発声練習をする方法が世界中で流行しています。

 また、音声障害の原因となる酸化ストレスを減らす予防として、抗酸化サプリメントを摂取することも有効です。声帯に負荷をかける前に抗酸化剤を摂取することで、良好な音声機能が維持されるという実験結果が出ています。

 声帯の維持が難しくなった場合として、塩基性線維芽細胞増殖因子を用いた声帯粘膜の再生医療も開発されています。20年来皮膚再生用に使用されている薬剤を声帯内に投与することで、8割以上の方で声帯の萎縮が改善されたという結果が得られています。

講演2:フェムテック到来により期待される女性医療のパラダイムシフトと展望

 吉形 玲美 先生
(浜松町ハマサイトクリニックグランドハイメディック倶楽部東京日本橋 特別顧問)

 フェムテック業界は安定成長が見込めることなどから、投資家の注目を集めています。

 現在のフェムテックの目的は、女性の健康状態をモニタリングし、それを迅速にアセスメントすることです。また、投資家との関係を築くメディアの広報効果やスタートアップを促進することも目的とされています。

 今後の課題としては、男性投資家の女性健康問題の理解が不足していること、財政支援が遅れていること、女性の健康問題がまだまだタブー視されていることが挙げられます。

 女性の健康寿命と平均寿命のギャップは、フェムテックにおいても非常に着目されています。女性の方が長寿ではありますが、メンタルヘルス障害の影響を受けやすく、健康長寿にも影響を及ぼしています。

 メノポーズケアも女性の健康長寿に強く寄与しています。欧米では、更年期症状や閉経の備えを世代別にアドバイスが受けられるオンラインアセスメントや、ライフスタイルを含めてサポートする統合医療・HRTホルモン補充療法に特化したオンラインクリニックがあります。また、ホットフラッシュに対応したプロダクトやデバイス、GSM対策・骨粗鬆症対策アプリも開発されています。

 日本でも月経周期把握デバイスを始めとして世代別にフェムテックが実用化されています。フェムテックを活用した検査は、個々の状態・体質・性質から自身に必要な対策を知る先制医療的なアセスメントをする役割がある点でも非常に重要です。エクオール産生能は生活習慣病リスクや乳がん・前立腺がんリスクの低減に関与していることが分かっており、産生性からの指導も重要だと考えています。

 性器泌尿器系のトラブルに対しても、フェムテックプロダクトを使用し、セルフケアをすることで病気のリスクを下げる効果が示されています。

 これからの女性医療には、セルフケアとして自分の体質や性質状態を知ること、医学的エビデンスに基づいたものでセルフメディケーションをすること、自身の健康管理を長期間やっていくためのデータ管理、どこでも専門医と繋がることのできる遠隔医療が期待されます。

講演3:老化細胞を標的とした抗老化治療の開発

 南野 徹 先生
(順天堂大学大学院医学研究科 循環器内科 教授)

 健康寿命と平均寿命の10年の差が生じる主な原因は、加齢に伴う血管機能障害によって引き起こされる疾患です。血管機能障害の原因の一つは細胞老化というものです。細胞分裂を終え、老化した細胞は炎症分子を出すことで、免疫系を活性化し自らを除去されるように仕向けます。除去されず、老化細胞が蓄積すると炎症分子が持続的に分泌されることで慢性炎症、さらには加齢関連疾患の発症につながると考えられています。

 現在、多くの研究者や企業の間で老化細胞除去薬の開発が進んでいますが、オフターゲット効果が懸念されています。そこで我々は、老化細胞に特異的に発現している老化抗原を同定し、除去することを検討しました。その一つが、血管内皮細胞で老化すると増加する老化抗原(GPNMB)を標的にした老化細胞除去ワクチンの開発です。

 ワクチン以外の除去薬群では、長期的にはその効果が少し弱まったり、白血球数や血小板数が減少するといった副作用がもたらされています。

 老化細胞除去ワクチンを接種したマウスでは、フレイルティの改善が見られる、寿命が延長するといった効果が見られます。

 抗老化治療の社会実装に向けては、老化が疾患として認定されていない、各種指標がないといったハードルがあります。フレイル、サルコペニア、DNAメチル化などを総合的に見て指標とすることに加え、老化を死亡率の上昇で表すということにも取り組んでいます。

 老化細胞は非常に多様な細胞のため、今後は、器官ごと、疾患ごとに異なる老化抗原を標的とするワクチンや治療薬の開発が求められます。これが実現できれば、個別化抗老化医療も可能になるでしょう。

 また、老化細胞特異的リプログラミングによる抗老化治療の開発も進められており、がん化を促進しない新たな抗老化治療の開発は実現可能になってきたといえます。

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