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2021年度 第5回日本抗加齢医学会WEBメディアセミナー(2022年3月15日) ダイジェスト

講演1.「第22回日本抗加齢医学会総会と脳のアンチエイジングと見た目のアンチエイジング」

国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター 病院長
阿部 康二

 2022年6月16日(金)~18日(日)、大阪国際会議場で「第22回日本抗加齢医学会総会」が開催されます。会長は私、阿部康二が務めます。テーマは「心身ともに若々しさを保つアンチエイジング科学とエビデンス」。心と体がそろって初めて本当のアンチエイジングになります。そのためにも科学的データに裏付けられた確固たるエビデンスに基づいてアンチエイジングが社会実装される必要があります。脳も体も共に若々しさを保つ秘訣が学べるよう、様々な企画を用意しました。是非ご参加ください。

 アンチエイジングは様々な臓器や皮膚などで、解明された病態に基づいて実施されますが、中でも脳のアンチエイジングは究極のアンチエイジングともいえるほど重要です。脳の老化による認知症に関しては、アルツハイマー型認知症、血管性認知症、レビー小体型認知症、前頭側頭葉変性症(FTLD)が有名な4大認知症です。特に、後期高齢者ではアルツハイマー型が80%を占めますので、脳のアンチエイジングを考えるとアルツハイマー型認知症の予防をいかにするかがテーマになります。

 最近の研究では脳以外、例えば心臓にもアミロイドβがたまっているという研究も発表されています。また、アミロイドβの沈着率は経年ごとに下がっていく一方で、正常な方の脳内のアミロイドβも加齢に伴って指数関数的に上がっていくことが分かってきており、これは血管性認知症でもFTLDでも同じです。つまり、アミロイドβの沈着だけではアルツハイマー型認知症なのか正常なのかが区別できません。アミロイドβの沈着は必須条件ですが十分条件ではなく、十分条件になるためにはアミロイドβの沈着度にプラスして「酸化ストレスがあるかどうか」「脳内炎症があるかどうか」が重要なキーワードになってきます。

 アルツハイマー型認知症のモデルマウスを使った研究では脳の血管内皮に好中球が粘着して血流を低下させており、血流が関係しているということが分かってきています。また遺伝性アルツハイマー型認知症の研究では、症状が出る6年前には血流の低下とそこで起こる酸化ストレスによる脳内炎症が起きていることもわかっています。

40年前は脳細胞と血管は無関係であると教わりましたが、日本が高齢化社会になった西暦2000年頃からアルツハイマー型認知症が一気に増えてきて血管性の問題を抱えていることが明らかになってきています。これが、超高齢化社会の認知症の実態です。血管の予防は認知症のアンチエイジング戦略として非常に重要になってきています。

 アルツハイマーは25年間をかけて徐々に進行し、発症します。ですので、中年を過ぎたら是非、脳のアンチエイジングの行動を始めてほしいと思います。そのためには血管を若々しく保つことが基本中の基本になります。高脂血症や高血圧、高コレステロール、高血糖等をコントロールし、抗酸化療法や抗炎症療法なども取り入れていけば発症を遅らせることができます。1つの手段として医薬品があればそれを使っていただいても、また、サプリメントを使っていただいても全く問題ありません。

講演2.「治りにくい足のキズ」

埼玉医科大学形成外科 教授
市岡 滋

 10年ほど前に、早く歩く人ほど寿命が長いという研究結果が出ました。また、有名な中之条研究では、早歩きの時間が多いほど予防できる疾患が増えるという結果に基づいて、1日8000歩、そのうち20分は早歩きをすることが推奨されています。歩くことはアンチエイジングの基本で、そのためには丈夫な脚が必要です。

 下肢はもともと血の循環が良くない部分ですので、普通の傷でも治りが遅くなります。そこに静脈や動脈の血行不全などが加わると、わずかの怪我でも感染を起こしたり、悪化して難治性潰瘍になります。特に、糖尿病の患者さんの場合は深刻で、動脈硬化で血管が詰まると虚血によって壊死が生じ、最悪の場合は大腿や下腿で切断することにもなってしまいます。世界では20秒に1人が糖尿病の合併症によって脚を切断されているということがわかっており、糖尿病患者は脚に潰瘍があると死亡するリスクが2.5倍になります。

 創傷治療における衛生管理(ハイジーン:hygiene)の4つのステップとして、洗浄(Cleanse)、デブリードマン(Debride)、創縁の新鮮化(Refashion)、そして創傷の被覆(Dress)があります。

初期の洗浄の過程での焦点はバイオフィルムになります。何故かわからないが傷が治らず逆に悪くなっている場合はたいていバイオフィルムが原因です。細菌が菌体外の多糖類を使って砦を作ってしまうやっかいなもので、免疫細胞や抗菌剤をも跳ね返してしまいます。ちなみに、歯のプラークや排水溝のぬめりなどもこのバイオフィルムです。除去しても細菌はすぐにバイオフィルムを再形成しますので、除去のたびに抗菌剤等を使って菌を退治することが重要です。抗菌剤には銀を含んだものや、比較的効果の高いヨード(イソジン)などを傷の状態に合わせて使用します。

 バイオフィルムは症状が出る前に形成されますが、これを診断するためのバイオフィルムを可視化するキットが開発されています。傷に貼って2種類の溶液をかけてバイオフィルムがあれば染色されますので、早期にバイオフィルムを発見できます。

 デブリードマンは、壊死組織や感染した組織などを除去する手技で、褥瘡や下肢潰瘍などのあらゆる創傷治療において必要な処置です。ハンドピース内の振動子で発生する超音波を利用し、そのキャビテーション効果を使って壊死組織やバイオフィルムを除去する「超音波デブリードマン」という機器も開発されています。これは、我々埼玉医大の臨床データで2016年に薬事承認され、当初は輸入機器を使っていましたが、現在は国内製造に成功して2020年から保険適用で使えるようになっています。また、界面活性剤やキレート剤を含んだ新しい薬剤も出てきています。

 さらに、20世紀後半から使われている所陰圧閉鎖療法という物理療法も非常に有効ですし、近年は1mmにも満たない血管や神経、リンパ管を皮膚や筋肉ごと取り出して、顕微鏡を使って移植したい部分を吻合して移植するマイクロサージェントという非常に繊細かつ高度な手術も効果を上げています。

講演3.「コロナパンデミック下の感染対策から偶然生まれた革新的な口腔ケア用品の開発」

大阪大学大学院歯学研究科高次脳口腔機能学講座顎口腔機能治療学教室 教授
  阪井 丘芳

 新型コロナウイルスパンデミックの初期の頃は、若者が感染しても軽症や無症状で治っていく一方で高齢者が感染すると重症化するということが不思議でした。免疫力の差という見解もありましたが、それだけではなかなか説明がつきません。ところが、新型コロナウイルスの受容体であるACE2が腸管以外に口腔領域にも存在する唾液腺の導管上皮に多く発現することが判明しました。NIHもCOVID-19で亡くなられた患者の半数以上に唾液腺に感染が生じていることを明らかにし、この情報が世界中に発信されました。唾液腺に感染するということが分かって納得しました。

 新型コロナウイルスは少ないウイルス量では感染しませんので、うがいや歯磨きなどの口腔ケアで賦活化すれば感染のリスクは下がります。また、舌が元気であれば口腔内では唾液が、飲み込んだとしても胃酸がウイルスを賦活化してくれます。しかし、高齢者は誤嚥でウイルスが肺に入ってしまうと、そこで肺炎を起こしてしまうわけです。通常の風邪やインフルエンザでは症状が比較的わかりやすいので、患者から離れればいいですが、新型コロナウイルスの場合は症状がない人からも感染しますので非常に面倒です。

 さて、我々が長年研究してきましたMA-T(要時生成型亜塩素酸イオン水溶液)に関してお話させていただきます。欧米では消毒薬として水道水にも使われている亜塩素酸ナトリウムの中で、僅かに生成される活性の高い化学種を人体にとっても安全な触媒を使ってさらに活性化して、菌やウイルスに対しても有効性を発揮するよう開発された液剤になります。

 有効期限が10年ほどあり、実際に自衛隊が災害対策等で使用しています。また、安全性とその消臭効果が認められてほぼ全ての国内線航空機で利用されていますし、羽田国際線ターミナルにある100ヵ所以上のトイレでも使用されています。また、昨年行われた東京オリンピック・パラリンピックの聖火リレーでも採用されました。

 このMA-Tですが、除去しづらい喀痰・剥離上皮・血餅等の口腔内の汚染物を柔らかくする作用も発見されています。看護師さんや歯科衛生士さんは口腔内の汚れを取るのを非常に苦労しています。口腔内の汚れはバイオフィルムを形成して口腔内の皮膚にこびりついているケースも多く、無理やり取ると口腔内が血だらけになってしまいます。特に脳梗塞や血管障害がある方は抗凝固剤を飲んでいますので出血がひどくなります。しかし、このMA-Tをバイオフィルムに振りかけますとわらび餅のようになって簡単に除去することが可能になります。

 さらに、MA-TがSARS-COV2を1分間でほぼ死滅させ、N95のマスクの再生にも有効であることが判りました。コロナ禍の医療・介護現場で医療従事者の負担軽減だけでなく、安全で有効な感染対策として提案していきたいと思います。

 すでに日本MA-T工業会が2020年に設立されており、MAT学会もこの3月にスタートしました。現在はまだ、一般雑貨品としての扱いですが、将来的にはこのMA-Tを医薬品または医薬部外品にしたいと考えています

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