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人生100年時代の活力をつくる医学マガジン

2026年度 第1回日本抗加齢医学会 WEBメディアセミナー (2026年7月15日)ダイジェスト

講演1:健康長寿と栄養 〜 健康食品・サプリメントの役割と将来展望~ 

西﨑 泰弘先生 東海大学ウェルビーイング研究所・所長 特任教授 

 日本は永年に亘って世界1の健康長寿国ですが、平均寿命と健康寿命には依然として差が約10年あり、その差を縮めることが大きな課題となっています。国の健康づくり施策である「健康日本21」においても、栄養や食生活に関する目標には改善の余地が多く残されており、健康長寿を達成するためには、日々の食生活を見直すことが欠かせません。

 2025年版「日本人の食事摂取基準」では、骨粗鬆症への対応やビタミン・ミネラルに関する基準の見直しなど、最新の知見を反映した改訂が行われました。こうした基準は医療現場だけのものではなく、私たち一人ひとりが健康づくりを考えるうえで参考とすべき大切な指標です。

 私が健康づくりの基本としてお勧めしているのが、「食事バランスガイド」の実践です。主食・副菜・主菜・乳製品・果物をバランスよく組み合わせることで、死亡リスクや循環器疾患のリスク低下にもつながることが、世界の一流誌で報告されました。しかし、忙しい現代社会では、毎日理想的な食事を続けることは簡単ではありません。外食やコンビニ利用の増加、若い世代の偏った食生活、高齢者の食事量低下などにより、気付かないうちにビタミンやミネラルが不足している方が少なくありません。

 このような背景から、健康食品やサプリメントを上手に活用するという考え方も必要になってきます。例えば、骨の形成や認知機能、免疫保持に関わるビタミンDは、多くの日本人で不足傾向にあることが分かっています。まずは日々の食事を整えることが基本ですが、それだけでは補いきれない栄養素については、サプリメントや健康食品を「補助的な手段」として取り入れることも有効な選択肢です。

 私は抗加齢ドックにおいて、栄養評価や生活習慣の改善指導を行っていますが、食事内容や栄養状態を見直すことで、酸化ストレスや動脈硬化関連因子が改善する例を数多く経験してきました。大切なのは、特別な食品に頼るのではなく、食事・運動・休養など生活習慣を総合的に整えることです。

 近年は「アンチエイジング」だけでなく、「ロンジェビティ(Longevity)」という考え方が注目されています。ただ長生きするのではなく、心身ともに健康で、自分らしく充実した老いを楽しむ生き方です。旬食材を薄味で整え、必要に応じてサプリメントや健康食品を賢く活用し、自分に合った健康づくりを続けることが、健康長寿への近道と考えています。

講演2:ストレスマネジメントにおけるウェルビーイングの活用

須賀 英道先生(龍谷大学文学部 教授)

 ストレスへの対応というと、多くの人は「ストレスを減らす」「問題を解決する」といった発想を持ちがちです。しかし、私がストレスマネジメントを考えるうえで重要だと考えているのは、問題ばかりに目を向けるのではなく、自分自身の「良いところ」や「できていること」に気づき、それを活かしながら日々の幸福感を高めていくウェルビーイングの考え方です。

 私たちは不調やストレスを抱えると、「自分はできない」「自分は病気だから」と、ネガティブな側面ばかりに意識が向きがちです。しかし、人には誰しも強みや得意なことがあり、不調はあくまでも自分の一部に過ぎません。まずは自分自身の強みに目を向けることが、前向きな気持ちや行動につながります。私は認知症予防教室などでもこの考え方を取り入れており、参加者の幸福感や生活意欲、認知機能などに良い変化がみられることを経験してきました。

 日常生活の中で実践しやすい方法として、私は「強みノート」を勧めています。自分の良いところや得意なことを書き留め、落ち込んだときに見返すことで、自分の価値や可能性を再認識することができます。また、毎日の小さな目標を決めて達成感を味わうことや、「ありがとう」と感じた出来事を書き留める感謝の習慣も、幸福感を高める有効な方法です。

 さらに、人とのつながりもウェルビーイングを支える重要な要素です。家族や友人との楽しい会話や、相手を認め合うコミュニケーションは、自然と笑顔を生み、心身へ良い影響を与えます。健康づくりというと運動や栄養が注目されますが、人との交流や前向きな気持ちも健康寿命を延ばすためには欠かせません。

 近年は、「幸せな人ほど長生きする」という研究結果も数多く報告されています。健康寿命を延ばすためには、身体の健康だけでなく、心の健康や社会とのつながりを大切にすることが重要です。特別なことを始める必要はありません。「今日は天気が良かった」「誰かと楽しく話せた」「無事に一日を過ごせた」といった日常の小さな出来事に目を向け、自分の強みや感謝を積み重ねることが、ストレスに負けない心と豊かな人生につながると考えています。

講演3:老いのスピードは変えられる! ― 科学が証明する、運動・栄養・社会交流 ―

石井 好二郎先生(同志社大学スポーツ健康科学部 教授)

 日本は世界有数の長寿国で100歳を超える方も増えています。しかし、私が大切だと考えているのは、単に寿命を延ばすことではなく、「いかに健康で自分らしく生活できる期間を延ばすか」という健康寿命の考え方です。老化は避けられないものですが、その進むスピードは生活習慣によって大きく変えることができます。

 加齢に伴い、最も影響を受けやすいのが筋肉です。筋肉量や筋力が低下すると、転倒や要介護状態につながるだけでなく、生活の質そのものが大きく低下します。一方で、フレイル(虚弱)は早い段階で気付き、適切に対応すれば元の元気な状態へ戻る可能性があります。ご自身の筋肉量を簡単に確認する方法として「指輪っかテスト」があります。両手の親指と人差し指で輪を作り、ふくらはぎの一番太い部分を囲んでみて、隙間ができるようであれば筋肉量が低下している可能性があります。

 筋肉を維持するために特別な運動を始める必要はありません。私は「スモールチェンジ」の積み重ねが大切だと考えています。散歩の歩幅を少し広げる、階段を使う、自宅でスクワットを取り入れるなど、日常生活の中で無理なく体を動かすことでも十分な効果が期待できます。運動は継続することが最も重要であり、楽しみながら続けられる方法を見つけることが健康長寿への近道です。

 栄養もまた筋肉を守るために欠かせません。高齢になると食事量が減少し、たんぱく質不足に陥りやすくなります。肉や魚、大豆製品などを意識して取り入れ、無理なダイエットは避けることが重要です。高齢期では、少しふっくらしている程度の体格の方が健康的に過ごせるという研究結果もあり、必要以上に体重を減らすことは、かえって健康を損なう場合があります。

 さらに、健康寿命を支える要素として、人とのつながりも見逃せません。誰かと一緒に運動をしたり、地域活動へ参加したり、日常の会話や交流を楽しんだりすることは、身体活動量だけでなく認知機能や心の健康にも良い影響を与えます。一人で頑張るよりも、仲間と楽しく続けることが介護予防にもつながります。

 私は、健康長寿のために特別な方法が必要だとは考えていません。運動、栄養、そして社会とのつながりという基本的な生活習慣を少しずつ積み重ねることが、老いのスピードを緩やかにし、人生をより豊かにします。今日からできる小さな一歩を楽しみながら続けることが、未来の自分への最も確実な投資になると考えています。

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