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日本抗加齢医学会 2018年度第2回メディアセミナー開催報告

2018年9月27日(木) 15:00-17:00
日本橋ライフサイエンスビルディング201 会議室
主催:一般社団法人日本抗加齢医学会 広報委員会

医学会からベンチャーを!

太田博明
日本抗加齢医学会理事 広報委員会委員長
国際医療福祉大学臨床医学研究センター教授
山王メディカルセンター・女性医療センターセンター長

●「長生きリスク」を克服するために

9月16日に総務省が公表した推計では、65歳以上人口の比率である高齢化率は28.1%、70歳以上人口の比率は20.7%と、日本は世界トップの高齢社会と
なっています。65歳以上の人口は約3600万人で、カナダの人口に匹敵します。すでに人口減少が始まっており、ボーナスとは逆の意味の「人口オーナス社会」と言われています。
いずれ訪れる多死社会には「長生きリスク」がつきもので、それを克服することが本学会の使命と言えます。
今回は医学会からもイノベーションを巻き起こそうと、本学会は昨年、「イノベーション委員会」を立ち上げ、「ヘルスケアベンチャー大賞」事業を始めることになりました。本日はその経緯や第1回ヘルスケアベンチャー大賞事業の概要について説明します。

イノベーション委員会立ち上げと ヘルスケアベンチャー大賞 事業の意義とは

坪田一男
日本抗加齢医学会理事 イノベーション委員会委員長
慶応義塾大学医学部眼科学教室教授

●アカデミアからイノベーションを

私は、イノベーションとは、invention(技術革新)
だけではなく、commercialization(ビジネス化)を含むものだと考えています。これまで、大学とイノベーションとの関連はなかなか社会から理解されていませんでしたが、それがないと、技術革新が社会に届きません。
現行の学校教育法を見ますと、大学の目的は  教育・研究に加えて「その成果を広く社会に提供する
ことにより、社会の発展に寄与する」ことだと明記されています。まさしく、大学の責務としてイノベーションを課しているのです。米国では新しい産業の60%が大学関連ですが、本では5%にも届きません。学会を含むアカデミアが日本の産業に貢献する必要があると言えます。

そこで、本学会はイノベーション委員会を立ち上げました。本学会が技術革新をビジネス化することで、健康イノベーションを作ることができると考え、「第1回ヘルスケアベンチャー大賞」を募集することとしました。

●「健康で長生き」に価値がシフト

 イノベーションが求められる背景として、日本の高齢化、人口減少があります。1人あたりの輸出金額、1人あたりの生産金額をみても、日本は海外諸国と比べて低い順位にあり、イノベーションが必要なのは間違いありません。
 20世紀が、クルマや航空機など、「空間を移動する」ことに価値を見出した時代とするなら、21世紀は、健康で長く生きるという「時間軸をのぼる」ことに価値がシフトするでしょう。その時に抗加齢医学が重要な産業のシーズとなり得ます。
 近年承認されている新薬に目を向けてみると、メガファーマよりは創薬ベンチャー発の物質が多くなってい
ます。次の10年、20年を見据えて、ベンチャーを育成する必要があるのです。すでに、ベンチャー支援を
教える大学もありますが、私は、若い医師が学会でアントレプレナーシップやイノベーションを学び、所属先に
持ち帰るような流れを作ることができれば素晴らしいと思います。本学会でイノベーションを伝えていくつもり
です。

●イノベーションという「横串」を

 本学会は広い領域にまたがる学会ですが、それにイノベーションという「横串」が入ることで、さらに変化するとよいでしょう。ヘルスケアベンチャー大賞は、医学会では初めての試みと思われ、他の学会に波及することを期待しています。
 医療費の増大は、見方を変えれば産業の拡大でもあります。世界最長寿の国である日本から、未病、抗加齢に関する新しい産業を発信する―。第1回ヘルスケアベンチャー大賞がその大きな流れを作るものになればよいと考えています。

本事業が求めるものと国の政策とは

森下竜一
日本抗加齢医学会副理事長 日本抗加齢協会副理事長
大阪大学大学院医学系研究科臨床遺伝子治療学寄附講座教授

ある調査によると、新しい事業・会社を始めることを立派だと思っている人の割合は、米国では91%、フランスでは83%、ドイツでは73%だったのに対し、日本では8%でした。日本では、「新しいことを始めるのはいけないことだ」という思いがあるようです。

それが日本にイノベーションが必要な最大の理由であり、この状況を変えていかなければなりません。特に、アカデミアや学会はコンサバティブ(保守的)なものですが、それでは日本の経済や医療は崩壊するでしょう。
日本が直面している一番の問題は少子高齢化で、放置しておくと、生産性は低下し、経済情勢は厳しくなります。保険・年金制度の崩壊も危惧されます。対策は、GNP、GDPを増やし、日本経済全体を発展させることしかありません。その点からも、イノベーション、新しい人材が必要なことがわかるでしょう。

●世界で成長続けるヘルスケア産業

国外に目を向けると、ヘルスケア産業は依然として巨大な市場です。成長産業と言うとIT産業が思い浮かびますが、その市場規模は2000年から2010年にかけてそれほど変化していません。主役が入れ替わっているだけです。これに対してヘルスケア産業は、プレーヤーが増えつつ、産業全体として成長しています。その大きな背景として、世界的な人口の増加、世界的な高齢化の進行という2点が挙げられます。高齢化や医療技術の高度化が医療費の増大をもたらすのは国内外で共通です。国内市場にのみ目を向けていると保険財政上の限界に直面し、高度な医療を公的医療保険でカバーするか否かという議論になるので、イノベーションを起こして流通させるためには世界市場に目を向けなくてはなりません。
そして世界では、新たな医療技術を生み出すプレーヤーの顔ぶれが変化しています。例えば、抗体医薬はほとんどがベンチャー発であり、その製造に用いる遺伝子組み換え技術は、大学が自らの技術で自立成長したロールモデルだと言えます。

●日本の成長戦略の一環として

日本も小泉内閣以降、政府が産学連携に力を入れ、アクセルを踏み続けています。アベノミクスの第三の矢は「民間投資を喚起する成長戦略」で、健康長寿社会の実現は、安倍内閣の成長戦略の柱となっています。健康・医療戦略推進法は、「健康長寿社会の形成に資する新たな産業活動の創出」や「我が国経済の成長に資する」ことなどを基本理念とします。

同法に基づいて司令塔機能を担う健康・医療戦略推進本部には、イノベーションを社会で実用化するための戦略を助言する役割もあります。
そうした流れの中で、コンサバティブな医学会から「ヘルスケアベンチャー大賞」が発信されることには大きな社会的意義があります。多くの応募を待っています。

事業の概要とルールについて

福田伸生
バイオサイト・キャピタル株式会社専務取締役
ヘルスケアベンチャー大賞事務局

●「ヘルスケア」の幅広いアイデアを募集

 本大賞で募集するテーマはアンチエイジングですが、幅広い領域にまたがることから、名称を「ヘルスケアベンチャー大賞」としました。創薬、遺伝子治療、機能性食品、機能性化粧品や、ディープラーニングを用いた健康サービスの提供なども対象とします。
選考基準は①invention②commercialization③社会貢献――の3つとし、書類選考を通過した5つのビジネスプランについて、2019年6月14日の本学会総会で最終選考をします。最終選考会は、1組5分のプレゼンテーションをし、その場で受賞を決定する「ピッチコンテスト」の方式で行います。
 受賞者には、賞金の他に副賞として様々な支援を予定しています。例えば、すでに製品やサービスを提供しているベンチャーには、生活総合情報サイト「All About(オールアバウト)」を活用したPR支援を無償で行います。大学発新産業創出プログラム(START)への推薦や、本学会から専門的な監修、助言も考えています。


ご参加いただきました皆様、ありがとうございました。

2017.9.27第2回メディアセミナー開催報告(PDF)

2018.4.12第1回メディアセミナー開催報告(PDF)