理事長から/組織図/会員数推移/設立趣旨

“アンチエイジング”を取り巻く状況について

 この度 日本抗加齢医学会 理事長 に就任しました。
新型コロナウイルス(COVID-19)との戦いは続いておりますが、“アンチエイジング”に関する認識を皆様と共有しようと思います。

老化計測が可能に。生活スタイルの違いが生物学的老加速度を変える

 COVID-19は老化との戦いでもあります。“アンチエイジング”の領域が急速に進歩してきました。5年前には、“アンチエイジング ”という単語ですら、医療広告に規制がかかっていました。私共、日本抗加齢医学会は 老化とどのような付き合い方をするかということを常に考えてきました。近年では 老化を遅らせることができると考えています。暦年が同じでも、見た目が若くみえる人と老けて見える人がいます。この表現形の違いは、今では生物学的年齢の違いとして評価されるようになりました。画像解析においてもAIの力を借りて老化計測が可能となってきたのです。老化時計(Aging clocks)と呼ばれる生物学的年齢指標が多く報告される様になりました。また、老化細胞が老化とともに増えてくることがわかってきました。老化細胞が分泌する細胞老化関連分泌因子Senescence Associated Secretory Phenotype(SASP)をコントロールすると、老化に伴って炎症が進むことを抑制することも可能です。epigeneticな制御を行うことで、近いうちに老化速度を遅らせて、寿命まで健康である状況が作られるかもしれません。

 2015年までは、運動・栄養(食事)・精神(脳・睡眠)で、老化を遅らせようと漫然と行ってきました。今では、腸内生物相の研究や、感染症、空気、光、温度、湿度、さらには中毒などの外部環境を含む環境問題の重要性がわかってきました。人間関係や、教育、収入なども老化に関与してくることがわかってきました。2018年からは“アンチエイジング”のためには、運動・栄養・精神(脳・睡眠)・環境をコントロールしようという流れになってきました。

 また、Epigenetic 研究の進歩から暦年齢以外の生物学的年齢の理解が進み、Epigenetic Clock などで、老化計測が可能となってきました。遺伝的背景が同じでも、生活スタイルの違いが、生物学的老化速度を変えるのです。遺伝子レベルと、epigeneticsのレベルの双方について個別の対応が必要になります。

老化関連疾患の紐づけられる病気が増えた昨今、これからは老化関連の共通メカニズムに対する治療法の開発が進む!

 2019年にはヒトでの老化の治療が話題になるようになりました。さらに2020年には、動物実験とはいえ、“若返り”がepigeneticsの制御で可能となることが報告されました。山中因子とepigeneticな調節で老化のステージを制御できる可能性が出てきました。
WHOの国際疾病分類も30年ぶりに改定され、ICD11として2022年には使用されることになりそうです。サブコードではありますが、老化関連XT9Tが採用され老化を疾患とする作業が進んでいます。“老化は病である”が理解されて、老化がICDの本コードに採用されるようになるまでには、癌と同じように、老化のステイジング研究を含めた基礎研究が長い年月必要でしょう。いずれ、老化に対する臨床治験が正式に行われるようになるものと思われます。現在の臨床治験でもすでに老化関連疾患という概念が使われ始めてきました。癌、心血管疾患、認知症、さらにCOVID-19なども、死因という立場では、老化関連疾患によることになってきました。老化関連の共通メカニズムに対する治療法の開発が進むでしょう。特に神経系への介入試験が急務といえます。

目指せ、みんなでピンピンコロリ!老化をコントロールしていく時代へ

 寿命と老化という単語が混同されて使われていた時代とは、現在は全く様相が異なってきました。人類はいつか寿命さえも乗り越える時代が来るかもしれませんが、まずはPPK(ピンピンコロリ:ピンピンは、元気の擬態語。ころりは、寝たきり生活がなく死ぬこと。)を目指そうではありませんか。健康寿命をできるだけ人の寿命(120歳)に近づけるのが現時点での目標と考えています。一部の組織では、若返りも可能な状況となってきましたので、老化をコントロールすることを目指し、それぞれの立場でそれぞれの臓器や組織での老化時計を調節しようではありませんか。経済学的、社会学的議論も進んでおり、老化が病という概念が社会にも受け入れられる時代を目指したいものです。

 さらに、WHOはRacism, Sexism, Ageismに反対する運動を進めていますが、本年からの10年はAgeismへの反対運動の集中期間となりました。ageism に反対することこそが、“アンチエイジング”です。

 なお、2025年の大阪関西万博では大阪パビリオンでは10歳若返りが合言葉で、リボーンがテーマとなっており、相乗効果が起こりそうです。このような状況認識から、日本抗加齢医学会はますます発展することが確信されます。Agingに関連する多くの方々がこの学会に参加され、みんなで、“anti-aging”の機運を高めてゆきたく思います。

2021年7月
一般社団法人
日本抗加齢医学会 理事長

近畿大学アンチエイジングセンター 教授
近畿大学医学部奈良病院皮膚科 教授


組織図


会員数推移

設立趣旨

2001年日本抗加齢研究会設立時には、すでに予見されていた超少子高齢化社会と老 人医療費の増大。 国民皆保険制度を有する我が国の福祉政策は、いずれその転換を迫 られるといった状況でありました。 そのような中、医師ならびに医生物研究者らが中 心となって設立した目的は、加齢現象や老化の研究が進む中、 老化の病的プロセスを 予防する抗加齢医学を積極的介入する方法を基礎医学的、臨床医学的に追求して実践 することにより、 生活者のQOL(Quality of Life)の向上を図る。 そして抗加齢医 療の提供により健康長寿を国民が享受し、老人医療費増加度の抑制、生産人口年齢の延 長、 労働力の確保といういわば国家戦略的な目的であります。 医学界ならびに社会 で認められるために、抗加齢医学に関する正確なデータを集積し、正しい情報を伝え、 科学的根拠・事実に基づいた医療としての確立を目指していくと同時に、人々に受け入 れられる医療となることを目指し活動を続けてまいります。

抗加齢(アンチエイジング)医学の独自性

1、健康寿命を延長するための予防医学・健康寿命を延伸する医学
抗加齢医学の研究は、出生から死亡に至るまでの様々な過程で生じる現象を科学的に 捉える上で、 非常に有意義でありその成果は生活習慣病をはじめとする様々な疾患を 予防し、ストレスや疲労、 免疫低下などの疾病発生促進因子を改善し、健康長寿を享 受することを目指す理論的・実践的科学であり、 これこそが抗加齢医学の定義であり ます。そして抗加齢医学的に重要なのは長寿の質です。 高齢者のQOL(Quality of Li fe)を向上には、アンバランスで病的な老化を早い段階から積極的に予防し、 健康寿 命を延長することにあります。

2、学祭的に捉える学問
抗加齢医学の独自性はこれまでの治療医学にみる縦割りの隔てを取り除き、多領域に わたる横断的、 集学的に研究することにより老化の関連性を把握できるにあります。  抗加齢医学の研究は、遺伝子や細胞レベルから動物やヒトの個体レベルまで幅広く、 生化学、生理学、 臨床医学など複数領域の医学にとどまらず、化学、物理学、農学、 薬学など他分野に係っています。 一方で実践は、栄養学、内分泌学を用いた補充療法 と運動・休養などの生活習慣の改善によって老化をどのようにコントロールできるかにあるのです。

3、生活者に積極的に行動変容を起こす医学
人は誰でも健康長寿を望んでいます。これまでの病気を治す医療から、老化による疾 病を予防し、健康寿命を延長することは、 人々が受け入れやすく、生活習慣の改善など 積極的な行動変容を起こす医学となりえます。


理事長 記事

■朝日新聞 Reライフ

・朝日新聞 2021年3月14日 朝刊 (朝日新聞社に無断で転載することを禁じます)
・承諾番号 21-1201

■2020年9月26日 第20回日本抗加齢医学会総会
 理事長提言 抗加齢医学の地平を開く 
 講演内容はこちら(PDF)(動画)から

■2020年3月30日 読売新聞朝刊(全国)10面
 企画広告 免疫力をアップし、健康を維持!
 掲載内容はこちら(PDF)から

■2019年6月14日 第19回日本抗加齢医学会総会
 理事長提言 アンチエイジングのエビデンスを探そう 
 講演内容はこちら(PDF)から

■2018年5月25日 第18回日本抗加齢医学会総会
 理事長提言 講演内容はこちら(PDF)から

■日本臨牀76 巻増刊号5 (2018年6月30日発行)
 老年医学(上)-基礎・臨床研究の最新動向-
 I.老年医学・老化研究の展望 に 「抗加齢医学と老年医学」が掲載されました。
 掲載内容はこちら(PDF)から