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理事会から

日本抗加齢医学会10周年記念メッセージ

学会10周年を迎えるにあたって

日本抗加齢医学会理事長
京都府立医科大学大学院消化器内科学教授
吉川 敏一

「抗加齢」という言葉に異論を唱えている人も多い。加齢に抗うのはとんでもないことだという。自然にまかせるのがよく、逆らうなど、とんでもないというのだ。しかし、今、私たちが生活している習慣が、老化を早め色々な病気を作り出しているとしたら、それこそ、とんでもないことなのだ。我が国の現代社会は、ストレス、肥満、運動不足、大気汚染などによって、もって生まれた寿命を無駄に浪費する状況を作り出している。いわゆる生活習慣病の発現しやすい社会なのだ。

医学の発展によって、ようやくヒトゲノムが解読され、病気発現の分子メカニズムが明らかになってきた。老化のメカニズムもフリーラジカル説からもっと詳しく、遺伝子、タンパクレベルでの仮設が提唱されている。長寿遺伝子も多く発見され、その活性手段もいくつか解明されている。抗加齢医学とは、いろいろな病気を予防し、科学的なエビデンスに基づいて、もって生まれた寿命を最大限にまで延長しようとする健康長寿を実現する学問体系といえる。いよいよ抗加齢医学が花咲こうとしているのだ。

この10年間には、抗加齢医学に関するいろいろな研究成果が発表されている。カロリー制限によって寿命を伸ばすだけでなく、見た目も若さが保てることが明らかとなった。長寿遺伝子を活性化する因子もいくつかみつかっている。健康寿命を短縮するさまざまな悪い生活習慣も、その機構とともに発見されてきた。若々しく元気に長生きできる手段がいろいろと提唱されている。これからは、それぞれに合った、テーラーメイドの抗加齢の実践が期待される。いつもチェックできるマーカーや自分に合った方法をみつけることが必要である。

今後の本学会には、科学的なエビデンスに基づいた抗加齢、アンチエイジングの更なる実現に向けた取り組みが求められる。幸い学会員も6,000人を超えた。人間に与えていただいた寿命を健康に、幸福に、最大限に全うできるように、抗加齢医学の発展に邁進しよう。

日本抗加齢10周年を迎えて

日本抗加齢医学会副理事長
慶応義塾大学医学部眼科学教授
坪田 一男

今年、日本抗加齢医学会は10周年を迎えることができた。会員数も6,500名と増え、10年前に20名ほどでスタートした会がこのように大きく育って感無量のものがある。この間、本会を支えてくださった先生方にはこの場を借りてお礼申し上げたい。

本会が抗加齢研究会としてスタートした2001年は、ルドマン先生がHGH(ヒト成長ホルモン)による若返りをN Engl J Medに発表して10年目にあたり、ホルモンによるアンチエイジングが大きな流れとなっていた時代だった。また、ちょうどMITの今井眞一郎先生とレニー・ガランテ先生が、カロリーリストリクションによる長寿のメカニズムとしてサーチュイン(長寿遺伝子の一つ)が活性化するためであるという歴史的な論文をNatureに発表した年だった。手探りのアンチエイジング医学が実践されつつあり、一方でエイジングのサイエンスが始まろうとしていた年である。

残念なことに初代理事長の渡辺慶一先生、2代目理事長の水島裕先生が突然にお亡くなりになり本学会も危機を迎えたが、現理事長の吉川敏一教授の“抗加齢医学をサイエンスに”という方向性によって健全に成長できている。私は副理事長として、またアンチエイジングジャーナル編集委員長として吉川理事長の“サイエンスに基づいた抗加齢医学”を本会の中心命題にしようと自分ながらに努力してきた。理事の先生方、評議員の先生方の力も大きく、おかげさまで「アンチエイジング医学はエビデンスがない」というようなご批判もかなり減ってきたと感じる。現在の日本の状況を鑑みるに、医療費が33兆円にも達し、「病気になったら治療をする」という戦略では経済的にも成り立たないことが明らかになってきており、予防医学が急速に脚光を浴びつつある。この流れの中にあって、加齢に焦点を当てた予防医学である“抗加齢医学”は、まさにこれから日本社会にとって必須のサイエンスと思う。

エイジングのサイエンスはますます進歩していくだろう。現在、カロリーリストリクションや酸化ストレス仮説による長寿のメカニズムが明かされようとしており、近い将来には臨床応用も始まるだろう。そのときこそが、まさにアンチエイジング医学の花開くときだ。今回10年目を迎えて会員の皆様と喜びを分かち合うとともに、10年後の抗加齢医学が想像もつかないほど大きく成長している姿を今から考え、お祝いの言葉としたい。