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2021年度第2回日本抗加齢医学会 WEBメディアセミナー

講演1:新型コロナウイルスワクチンに関する情報提供

石井 健 先生 (東京大学 医科学研究所 感染・免疫部門 ワクチン科学分野教授)

 2020年新型コロナウイルスのパンデミックはワクチン研究の重要性と緊急性を改めて浮き彫りにし、歴史的なワクチン開発の破壊的イノベーションを可能にしました。史上初1年以内に世界規模のワクチン供給が一部の国で可能となったことには理由があります。

 新型コロナウイルスに関する正確な情報は、首相官邸の新型コロナワクチンについてのウェブサイト、厚生労働省のQ&Aを御覧ください。コロナ禍で一番のワクチンとなりうるのは「真に正確な情報」と「教育」だと思います。人生のあらゆる局面で、正確な情報を入手し、リスクとベネフィットを比較し、自己責任において行動する力を養う必要があります。

 2020年11月に開催されたG20サミットでは、菅総理大臣が全ての人に質のよい保険・医療サービスを提供する「ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ」の達成に向け貢献していく考えを強調しました。国際公共政策研究では、ワクチン開発のメリットは公衆衛生・市民安全のみならず、国防や外交・国際貢献、経済・産業にまで及ぶと考えられています。ワクチンは感染症だけでなく身体からあらゆる疾患を除きたい場合に利用できるため、世界的にワクチンの技術開発が進んでいます。

 一方日本では、ワクチン学、ワクチンのサイエンスを系統立てて学べる教育機関はありません。また、国産ワクチン開発が進まない理由として、モダリティとしてワクチンが選択肢にないことや次世代ワクチンの開発企業が少ないことが挙げられます。さらに日本にはワクチン開発研究や基礎研究拠点がありません。その他喫緊の課題もあり、研究機関だけでなく政府や企業、研究チームが共同でコンソーシアム型、ワンルーフ型のワクチン国際研究拠点の設立が期待されます。

 ポストコロナ時代を見据えた新次元ワクチン研究も構想しており、ヒトの免疫応答の多様性をより高解像度で計測し、ワクチン設計をモジュール化する技術を開発することで迅速かつ性格に免疫を誘導できる新次元ワクチンデザインを可能にすることを考えています。ワクチン学などの教育も含め、日本ブランドという確かな品質を売りに、感染症研究の発展、ワクチンの輸出国を目指すべきだと考えます。

講演2:心不全防ぐRNAの発見〜次世代RNA医薬・ミトコンドリア医療への扉〜

尾池 雄一 先生(熊本大学大学院生命科学研究部 代謝・循環医学分野 分子遺伝学講座教授)

 超高齢社会において心不全による死亡率は急増しており、医学的社会的にも問題となっています。心不全の予後はあらゆるがん患者と同様、悪いことがわかっています。心不全の病態では、心臓左室(LVEF)の駆出率が低下しているもの(HFrEF)、駆出率が保たれているもの(HFpEF)、軽度の駆出率低下40-50%(ミッドレンジ)のパターンがあります。HFrEF治療については臨床研究がなされているものの、全心不全患者の40%は駆出率が保たれている(ミッドレンジおよびHFpEF)心不全であり、それらについては研究が進んでおらず、心不全の原因を究明し治療する必要性が示唆されていました。

 我々は心不全の心臓ではこのRNAが減っており、心不全を防ぐ心筋細胞に存在するRNAを見出しました。このRNAは、心不全の心臓ではその量が減っており、また、心不全の原因となる高血圧や高齢の心臓でもその量が減少しています。心臓でのそのRNA量が減ること自体が、心臓のポンプ作用を低下させ、心不全の発症や増悪の原因となっていることがわかりました。逆に、心不全の心臓にこのRNAを補充すると、心不全が改善することも判明しています。このRNAは人の心筋細胞にも存在しており、心不全の新たな治療法開発の伴となる発見です。この臨床応用に向けて我々も実験を進めており、成果も出てきています。

 これまでRNAを医療に直接使用することはあまり注目されていませんでしたが、コロナワクチンで成功している全てがRNAワクチンであり、感染症などの予防に対してのみならず、多くの疾患に対して足りないもの(減っているもの)を補充する治療戦略として、RNA は注目を集めており、欧米で複数の治験がスタートしています。

講演3:エイジングクロックと“見た目の科学”

山田 秀和 先生 (日本抗加齢医学会副理事長、近畿大学アンチエイジングセンター教授
近畿大学奈良病院皮膚科教授)

 見た目は、健康そのものを表すのではないかという考えが市民権を得るようになってきました。皮膚・容貌・体形に分け、健康・老化の指標となりうるのではないかと考えられています。皮膚は既にある程度ステイジング化されていますが、今後は老化のステイジング概念が進むと思います。

 2018年から老化は病だという考え方が提唱されるようになりました。人が亡くなった際、医師は国際疾病分類ICDによって死因を記録しますが、その第10回改訂版ICD10から30年経った2018年に第11回改訂版(ICD-11)にてエイジング概念が登場しました。ICD-11に老化関連疾患コードXT9Tが作られたことによって、FDA(アメリカ食品医薬局)で採用されれば、治験や実験が開始されるでしょう。現時点では日本もICD-11は採用検討段階です。また老化関連疾患に伴う疾患名とカテゴリー化することにより、XT9Tコードが頻出する場合は政府の資金投入先も老化対策となっていくことが予想されます。

 エピジェネティッククロックをベースに生理学・生化学を付加し、さらに見た目、既往歴、ライフスタイル、精神、環境を付加していくとエイジングクロック(老化計測)が可能だと考えられています。また、見た目が血圧や心拍数といったバイオマーカーとも関連しており、見た目が若い人は体も若いことが分かっています。

講演4:第3回ヘルスケアベンチャー大賞紹介

福田 伸生 氏 (バイオ・サイト・キャピタル株式会社専務取締役 第3回ヘルスケアベンチャー大賞事務局)

 本年も日本抗加齢協会主催、日本抗加齢医学会共催の第3回ヘルスケアベンチャー大賞紹介を開催致します。アンチエイジングに資するヘルケア分野のビジネスプラン/アイデアを広く募ります。既に募集を開始しており、7月26日まで受付けています。ファイナリスト発表は9月6日、10⽉29⽇(⾦)15:00〜17:00に最終審査会を日本橋ホールにて開催します。

 昨年の第2回ヘルスケアベンチャーでは高齢者転倒予防研究から転倒リスク評価、予防策を提案した合同会社アントラクトが受賞、網膜色素変性症の治療法を研究し、臨床開発中の株式会社レストアビジョンが学会賞を獲得しました。 審査基準は、インベンション/コマーシャライゼーション/社会貢献性の3つの複合点により評価します。受賞枠については企業5枠、個人3枠設けています。医師・医学博士であるメドピア株式会社代表取締役社⻑CEO、⽯⾒ 陽氏による特別講演「Bench to Bedside の時代からBedside to Community の時代へ〜」も予定しています。皆様からの多くのご応募をお待ちしています。

講演5:第21回日本抗加齢医学会総会のみどころ〜Well-beingを目指して何でものみこむアンチエイジング〜

内藤 裕二 先生(第21回日本抗加齢医学会総会大会長、京都府立医科大学大学院医学研究科生体免疫栄養学講座寄附講座教授)

 京都府では、ピロリ菌除去による胃がん発症防止や内視鏡による早期発見を進めており、死亡者が大きく減少しています。しかし、京都府立医科大学にて胃がん内視鏡治療後の患者を追跡すると多くの方ががんではなくサルコペニア、フレイルなどの加齢疾患により亡くなっていることがわかりました。

 一方で大腸がんはというと、日本人男性および女性は大腸がんでの死亡率が高く、今や残念ながら世界トップクラスです。大腸がんは胃がんと異なり、食、微生物・腸内細菌叢および代謝・免疫が絡み合って発症します。大腸がん予防にほぼ確実に有効とされているのは運動です。アメリカではコホート研究で34.7万人を12年間追跡し、体重や運動、食事など5つの生活習慣因子と大腸がんリスクを計算したところ、因子5つを満たせば明らかに大腸がんリスクが減少することがわかりました。また生活習慣因子を満たした健康的な生活習慣で全死亡リスクは74%低下することも判明しています。また腸内細菌叢、食事、遺伝子を調査した結果、アメリカ人においてですが最も悪い食物は加工肉、ダイエット飲料、アルコールです。大腸がんは早期発見で治癒が可能です。5~10年に1度の全大腸内視鏡検査により、大腸がんの罹患率、死亡率は劇的に減少しますので是非検査を受けてください。

 本年6月25日~27日に現地およびWEBにてハイブリッド開催致します第21回日本抗加齢医学会総会では、WEB参加者のためのテーマ別11トラックをご用意しています。その他、テロメア研究等で名高いエリッサ・エペル博士の特別講演や延暦寺一山 泰門庵 住職の堀澤祖問大僧正の招請講演等を視聴可能な、総会会長の思いが伝わる「プレジデントセレクティッドトラック」も新たに作成しました。是非お見逃しなく。

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