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人生100年時代の活力をつくる医学マガジン

2022年度 第2回日本抗加齢医学会WEBメディアセミナー(2022年11月15日)ダイジェスト

講演1.「スマートフォンとウェアラブル端末による実践型アンチエイジング医療の実際」

青木 晃 先生 銀座よしえクリニック都立大院

 外来では医者対患者による、1対1のスタイルが当たり前ですが、我々医者は、患者さんに対して摂取カロリーや食事、運動に関し、一方的な指導になりがちです。ところが患者さんが家に帰ると、食事制限や運動は明日からやればいいと考え、なかなか良い方向へ持っていくことは難しいのです。

 学会誌(2012年)「Happy People Live Longer!」という特集の中で、面白い記事がありました。2008年の論文で、1983年から2003年まで、4739人の人間関係ネットワークを追跡したものですが、ある一人の人が幸せだとすると、その幸せは、友達の友達の友達まで伝播するということです。

 同じような内容で、2007年に行われた1万2067人規模の研究では、太っている人がいると、その友達の友達の友達まで肥満が伝播するということです。逆に、健康な友人や、食生活や運動を心がける友人から良い影響を受ければ、肥満傾向を減らせることができるということです。

 そこで私は、アンチエイジングを実践している者がいたとすると、伝播させていくことで周りの人たちに影響を及ぼし、アンチエイジングの伝播が起こるのではないかと考えました。

 SNSは、コミュニケーションがリアルタイムで容易に行えます。例えばFacebookに日々の食事や運動を投稿すると皆が見てくれるので、お互いが確認することができ、ある指導者がそれを見た場合に、アドバイスを送ることもできます。

 このようにスマートフォンのアプリでも、健康情報管理ツールを作り、共有ができると良いと考えました。例えば今週の歩数や睡眠、食事の内容など、普通のスマホでも簡単に記録することができます。それらを統合して作ったものが、Lav(Lifestyle Assist for Vitality)という生活習慣改善アプリです。生体の色んな情報を客観的にデータで出せる他、チャットでコーチングを行い、一般ユーザーやクリニックの患者さんなど、お客様に合わせた健康プログラムを提供することができます。

 次にMOTHER(ガジェット)は、体温で発電しており、充電が不要の為、外す必要が無く、さらにSDKをオープンにしているという点などが特徴です。また、ロストデータが無いという点も一つの大きな特徴で、ずっと心拍変動や体温の変動を測ることができます。つまり、生体モニタリングができるということは、人の生死についてもはっきりと把握が可能です。そうすると、病院や介護施設の巡回業務で、検温をする手間が省けたり、あるいは一人暮らしの高齢者が本当に生きているのかなど、全てモニタリングが可能です。

 いま様々な技術が進歩する中で、全く違うスタイルの新しい医療というものに、ICTを使っていけるということが面白いと思っております。

講演2.「近未来型健康社会の実現に向けた腸内環境の理解と応用」

國澤 純 先生 医薬基盤・健康・栄養研究所 ヘルス・メディカル連携研究センター

 私たち日本人の腸内細菌はどのようなものかという点で、例えばヨーグルトに使われているビフィズス菌や乳酸菌は、“善玉菌”として良く知られており、特に日本人はビフィズス菌が多いと紹介されていますが、一方でビフィズス菌がほとんど無いという方もいます。ビフィズス菌一つ見ても、物凄く個人差があるということがわかります。

 さらに、腸内細菌をエンテロタイプという血液型のように分けると三つのタイプに分けられ、これは長年の食生活に影響されると言われています。例えば、バクテロイデス型はたんぱく質や油の多い肉食系の腸内細菌と言われ、プレボテラ型は草食系で食物繊維や糖質と言った穀物中心の食生活をされてきた方、ルミノコッカス型は、その中間の雑食型と呼ばれ、日本各地で行ってきた調査のデータから見ていくと、肉食:雑食:草食が大体4:5:1ぐらいになるという結果が得られています。

 「どんな腸内細菌であれば良いのですか」という質問をよく頂きます。様々な菌がバラエティ豊かに揃っていることを多様性が高いと言いますが、そのような腸内環境が基本的に良いとされ、どうやって高めるかと言うと、やはり大事なのは食事です。私たちの取った食事が、栄養になるだけではなく、腸内細菌の餌にもなるので、色んな食材を含む食事を取ると、それぞれを餌にする腸内細菌が増えるので、結果として多様性が高くなっていきます。

 また解析を進める中で、痩せ菌・デブ菌と言われる、肥満に関わるような腸内細菌で、肥満の予防に役立つような菌を最近同定しました。日本人には、肥満を改善・予防できるような特有の菌があるのではないかと考え、データから見えてきた菌がブラウティア菌というものです。実際に人における安全性・有効性というようなものが見えていないので、引き続き検証していこうと考えております。

 日本各地で、人のデータやサンプルを集めながら測ったものをデータベース化して、バイオマティクスを用いて解析し、これを介護や健康サポート薬局、更には創薬・ワクチン・ヘルスケアなどの新しい産業で展開します。それを研究にフィードバックし、様々な大学や病院とコラボレーションをして、色々な病気の人のデータを取らせて頂き、その比較によって病気のバイオマーカーや発症要因を同定し、これを改善する為の生活指導によって、健康社会を実現していきます。

講演3. 「流体解析を用いた睡眠医療への展開」

岩崎智憲 先生 徳島大学大学院医歯薬学研究部 小児歯科学分野

 交通事故のリスクは7倍、4年後の高血圧の発症リスクは3倍、心臓血管疾患のリスクは5.2倍、脳卒中のリスクは3.3倍ということで、睡眠時無呼吸症候群は様々な影響があります。成人病のリスクは、非常に高いということが改めて確認できます。

 実際の治療は、まず専門医を受診し、一晩検査します。それでも精密検査が必要となると、脳波や電極を付けた本格的な泊りの検査となります。代表的な治療としてCPAPというものがあります。コンプレッサーをかけて、鼻や口から空気を通し、陽圧で軌道を広げます。

 流体解析というものは、モデルを作成して行います。手術では狭窄箇所をどのぐらい広げれば良いかという、外科的な発想になりますが、その時に現状のモデルと手術後のモデルを実際に作り、これにフローを流し、どれぐらいの介入でどれぐらい良くなるか予測するようなことに反映できると思います。予知性の高いモデルを作って、圧力値を決めることで、実際の症例ごとのピンポイントで効率的な治療ができるかもしれないと考えております。

 また睡眠時無呼吸というのは、高齢者の方に多いと言われています。女性の閉経後にも増え、他にはダウン症、脳性麻痺の方にも多く見られます。共通しているのは、筋力がかなり落ちているということです。つまり、気道の周囲の筋が大事だと考えられています。鼻が詰まっている時に思いきり吸わないと息は吸えないように、気道に影響するのは吸気時に起きる喉の部分、陰圧が大きく影響すると考えられています。

  睡眠時無呼吸のリスクは、COVID-19の場合8倍になるなど、かなり高いと言われています。その原因の一つの可能性として、鼻呼吸をしている人と、口呼吸をしている人では、空気の流れが全く違い、ウイルスの粒子の流れも全く違う可能性があります。鼻が悪い人の場合は口から息を吸う、それは思いっきり吸うかもしれませんし、そうしたら粒子が身体の奥深くまで届くようなこともあるかもしれません。流体解析を使うと、空気感染症の解明に使える可能性があります。

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