アンチエイジング医学(抗加齢医学)とは

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抗加齢医学・診断とは

アンチエイジング(抗加齢)ドック

 老化(エイジング)には、加齢に伴って避けがたい、正常な範囲内での老化と、病的な老化があります。両方を足したものが実際のエイジングです。
 病的な部分は、検査で見つけることができ、ある程度、予防したり治療したりすることもできます。予防や治療をすれば、健康に過ごせる健康寿命を延ばすことにつながります。そのため、アンチエイジングは、正確には、アンチ『病的な』エイジングといえます。
 病的なエイジングがどこに、どのように起きているのかを調べる方法のひとつが、「老化度判定(アンチエイジング)ドック」です。

筋・血管・神経・ホルモン・骨を調べる

 老化度判定(アンチエイジング)ドックでは、「筋」「血管」「神経」「ホルモン」「骨」の5種類の体の働き(機能)の老化度をそれぞれ調べます。
 ・「筋」と「骨」は体を支えたり動かしたりする機能
 ・「血管」は生きていく上で欠かせない酸素を体中に運ぶ機能
 ・「神経」は記憶や判断、計算などの認知機能
 ・「ホルモン」は睡眠から食事の消化まで身体のさまざまな働きを調整する機能
を表します。
 ・「筋年齢」検査では、筋力や筋量
 ・「血管年齢」検査では血管の硬さや動脈の詰まり具合など
 ・「神経年齢」検査は、質問に答える形式で、記憶を含めた認知機能
 ・「ホルモン年齢」検査は、加齢に伴って分泌の減るホルモンの量
 ・「骨年齢」検査は、骨密度
を調べます。

 各項目の検査結果を年代別の標準的な検査結果と比較し、「筋年齢」は何歳相当、「血管年齢」は何歳相当、とそれぞれ判定します。

病的老化を促進する危険因子5項目

 老化度判定ドッグでは前述した「筋」「血管」「神経」「ホルモン」「骨」の5項目と同時に、病的な老化を促進する危険因子5項目についても調べます。
 「免疫ストレス」「酸化ストレス」「心身ストレス」「生活習慣」「糖化ストレス」です。
 ・「免疫ストレス」では、免疫力が低下していないかどうか
 ・「酸化ストレス」や「糖化ストレス」は、老化の2大原因ともされる、活性酸素やAGE(終末糖化産物)の体内での発生状況
 ・「心身ストレス」は、精神的なストレスが大きい時に分泌量が増える副腎皮質ホルモンの量など
 ・「生活習慣」では喫煙や飲酒、睡眠の状態
を調べます。

 危険因子のうち「免疫ストレス」「酸化ストレス」「糖化ストレス」については自分では気づきにくい場合が多いですが、喫煙している人は「酸化ストレス」も「糖化ストレス」も高い傾向にあります。
 また、糖尿病の人や、揚げ物やステーキ、焼き肉を頻繁に食べている人は、「糖化ストレスが」高いと考えられます。
 「心身ストレス」は、ある程度、自分で判断することが可能です。
 「生活習慣」は、喫煙や飲酒、睡眠以外に、運動などでどれぐらい体を動かしているかが関係します。




大切なのは老化度5項目のバランス

 5種類の体の機能の老化度で、たとえば、筋年齢が実年齢より20歳若いものの、血管年齢は実年齢より10歳上だと判定されるなど、5項目の判定がばらつくことがあります。せっかく強い部分があっても、弱いところがあると、全体の老化度は弱い部分に引っ張られ低くなり、健康寿命を延ばすことができません。危険因子も、とくにリスクの高い項目があると、他の項目のリスクがそれほど高くなくても、リスクの高い項目によって全体のリスクが高くなってしまいます。

三つの「育」 知育・食育・体育

 アンチ病的エイジングへの取り組み方は、自分の弱い点をさがし、まずそのうちの2点から改善していくという方法です。弱いところを強化していくことで、より好ましい状態で全体のバランスがとれるようにしていきます。
 どの機能が弱いにしても、基本的にはまず、生活習慣の改善が重要です。その際、私は三つの『育』を強調しています。「知育」、「食育」、「体育」です。運動をさす「体育」、知識だけでなく、もっと元気になりたいというやる気や意欲も含めた「知育」は特に大切です。やる気や意欲がなければ、食育にも運動にも取り組めません。



結果に基づいた指導

 予防医学として一次予防に重点を置き,アンチエイジングドックの結果に基づいた生活習慣の改善指導(食育・体育・知育)を行います。さらに必要に応じて医学的治療(薬物医療・ホルモン補充療法・再生医療)を行います。指導においては動機付け・行動変容が重要であり、抗加齢専門医・指導士の裁量(指導技術・知識・熱意)が問われます。

仮説証明のためにデータを蓄積する意義

 私は「機能年齢が最も老化した部位(老化の弱点)と最も大きな危険因子を早期に発見して是正すること、そして全身がバランスよく均質に老化すれば、平均寿命と健康寿命の差が減り、健康寿命が延伸できる」との仮説を立てています。アンチエイジングドックによる機能年齢と老化危険因子の評価,そして支援ソフトの使用による大規模データの集積は本仮説の実証のために重要な役割を果たすはずです。本システムの使用については、仮説検証を目的とした多施設参加型臨床研究に各自が参加する方法としています。


<出典元>
朝日新聞 Reライフ.net: <連載> 「アンチエイジング最前線」 老化予防に老化度を計ろう アンチエイジングドックのすすめ、 https://www.asahi.com/relife/article/14967229
日本抗加齢医学会 認定テキスト改訂版編纂委員会: 第4版 アンチエイジング医学の基礎と臨床、メジカルビュー社、 2023、 P326-328

  

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